研究課題/領域番号 |
07044188
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
和田 敬四郎 金沢大学, 理学部, 教授 (70028174)
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研究分担者 |
ゴルベック J.H. ネブラスカ大(リンカン), 生化学, 教授
ブランケンシップ R.E アリゾナ州立大(テンピ), 生化学・化学, 教授
ブキャナン B.B. カリフォルニア大(バークレー), 植物生物学, 教授
高橋 康弘 大阪大学, 理学部, 助手 (10154874)
大岡 宏造 大阪大学, 理学部, 助手 (30201966)
松原 央 岡山理科大学, 理学部, 教授 (00028242)
星名 哲 金沢大学, 理学部, 助教授 (50019486)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 葉緑体 / プラスチド / 光化学系複合体 / 緑色イオウ細菌 / 電子伝達系 / FNR / Fd / チオレドキシン |
研究概要 |
これまでの2つの国際学術研究(平成4年からの2年間(04044110)および平成6年度1年間(06044086))で行って来た共同研究をさらに前進させ、葉緑体を中心とする各種のプラスチドの電子伝達反応の制御機構を解明することは、光合成から始まる植物の重要な同化機構までを一体として捉らえ、理解するために不可欠であると思われる。 新しくスタートした共同研究(07044188)では、とくに以下の点を明らかにすることを目的とした。 1)フェレドキシン(Fd)を中心とするプラスチド内の電子伝達反応に関して、光合成組織における葉緑体と非光合成組織におけるプラスチド間でどのような違いがあるか明らかにする。 2)光化学系I反応中心複合体の電子伝達成分を高等植物の葉緑体、緑色イオウ細菌、さらに原始的と考えられているHeliobacteriaについて比較検討し、Fe-Sセンター型光化学系の電子伝達の調節機構を明らかにする。 3)チオレドキシン系によるチオール=ジスルフィド交換反応と細胞内レドックス調節機構との関連および種々生理活性物質の機能調節について明らかにする。 これらの点について研究は日米双方でそれぞれ独自に行うが、なるべく連絡を密にして情報交換を行うことにした。またそれぞれが研究を補完し合うために、互いに調製したサンプルを持参して結果の検討をすることとした。 非光合成組織におけるプラスチドの電子伝達機構の研究はこれまでにも和田、松原、ブキャナンによって行われてキたが、今年度に至ってようやくホウレンソウ根から非光合成組織に特異的に発現するフェレドキシン-NADP還元酵素 (FNR)のcDNAを得ることに成功したのは今後の研究に対しても大きな成果の一つであった。これまでの方法を再検討して、改めて作成したDNAプライマーを用いて、PCR法により正しいクローンを得ることができた。その結果、葉緑体で発現すつFNRとアミノ酸配列を比較することが可能となり、これまでに報告されてきたイネ、トウモロコシのものとも合わせ、非光合成組織のもの同士は相同性が高く、光合成組織のものと非光合成組織のものとは相同性が低いことが、これまでもFdのアミノ酸配列からも言われていたように、明らかになった。これは進化的に重要な意味をもっており、植物種の分化以前に光合成組織と非光合成組織の分化が起こったことの証明と考えられる。NADPHの結合サイトやフラビンの結合サイトでは互いに相同性が高いこと、またFd結合サイトを含むN-末端部で違いが大きいことも、非光合成組織においては葉緑体とは逆の電子伝達を行っているとする考えを指示するものである。また、非光合成組織型FNRが幼植物では葉緑体でも発現・機能している事実が明らかになり、発現調節は組織特異的ではなく、もっと複雑にプラスチドの機能と連携した機構で調節が行われている用である。得られた非光合成組織型FNRのcDNAを用いて、いよいよ発現調節の研究に着手できることになった。 葉緑体の光化学系I複合体はいわゆるFe-Sセンター型で、緑色イオウ細菌の光化学系を祖先系とするものと考えられて来た。最近特にHiliobacteriaの光化学系の研究が進み、共通してFe-Sセンター型光化学系をもつことが明らかとなった。それらが有する複合体内の電子伝達成分についても相当の相同性が見られる。ゴルベックは光化学系I複合体のセンターXに着目し、そのFe-Sセンターを保持していると考えられるシステイン556とシステイン565をセリンに遺伝子改変によって変えたものを用いて、Fe-Sセンターを構成させ、電子伝達速度の変化を比較した。そしてFe-Sセンター結合部位近傍のどのアミノ酸残基が重要かについても明らかにした。これはブランケンシップらのHeliobacteriaの光化学反応中心複合体タンパク質の構造比較からの結論ともよく一致することが明らかとなった。 ブキャナンらはチオレドキシン系によるチオール=ジスルフィド交換反応と細胞内レドックス調節の機構を解析して来た。最近では細胞内レドックス調節の重要性が細胞内でのウイルスの繁殖とも関連しているとの結果も出され、ますます重要視されている。また種々の生理的阻害物質、蛇毒、蜂毒等の生物毒、アレルゲンなどの生理活性物質の無力化にもこのチオレドキシン系が有効に利用できるという結果が集積されつつある。 これらプラスチド内の電子伝達機構の調節は、それ自身で重要であるばかりか、ひいては細胞内の電子伝達とレドックス調節にも繋がりを持ち、あらゆる植物の環境適応や生育そのものにも関係し、植物研究の基礎となるものである。
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