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結晶中における酵素反応の迅速X線結晶構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 07044195
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分共同研究
研究機関京都大学

研究代表者

小田 順一  京都大学, 化学研究所, 教授 (50027041)

研究分担者 加藤 博章  京都大学, 化学研究所, 助手 (90204487)
SCHLICHTING Ilme  マックスプランク研究所, 主任研究員
PETSKO Gregory a.  ブランダイス大学, 基礎医科学研究所, 教授
山口 宏  大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (10252719)
西岡 孝明  京都大学, 化学研究所, 助教授 (80026559)
ANDERSSON Inger  スウェーデン農科大学, ウプサラ生医学センター, 博士研究員
ハディュー HAJDU Janos  オックスフォード大学, 分子生物物理学研究室, 講師
研究期間 (年度) 1995
研究課題ステータス 完了 (1995年度)
配分額 *注記
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1995年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
キーワードX線結晶解析 / 動力学的結晶解析 / タンパク質結晶学 / 低温X線結晶解析 / グルタチオン合成酵素 / 結晶中での酵素反応
研究概要

本研究の目的は、静止状態ではなく、反応途中における酵素の構造をX線結晶解析によって捕らえる方法を確立することにある。そのためには、第1に、結晶状態という特殊な状態での酵素反応の反応速度論的な解析を行い、目的とする反応系の挙動を把握すること、特に結晶状態では、酵素反応の速度よりも、基質が酵素の活性中心に到達する速度の方が律速となることから、予め基質の前駆体を酵素に取り込ませ複合体を作らせてから、何らかの引き金で反応を一斉開始させる、すなわち反応の同調が必要となる。第2に、(1)X線回折強度測定の時間を早くするとともに、(2)結晶を冷却して酵素反応速度を遅くすることにより、時間分解能を実質的に向上させることが必要となる。そこで、グルタチオン合成酵素を選び、それら条件の確立を目指した。
我々は、大腸菌由来グルタチオン合成酵素について、その結晶構造を解析するとともに、同酵素の遷移状態アナログを合成して、反応機構の詳細を解明してきた。また、合成した遷移状態アナログが実は酵素の活性中心で、酵素の作用によりATPからリン酸基の転移を受けリン酸化させることによって強力な阻害剤へと変換されることを見いだした。そこで、そのリン酸化反応のうち、リン酸化される直前の酵素:遷移状態アナログ複合体を迅速X線結晶解析の標的に選んだ。
1.結晶状態での酵素反応の同調と反応速度解析
結晶状態でグルタチオン合成酵素が触媒する、ATPから遷移状態アナログへのリン酸基転移反応を同調させるため、ATPの代わりに、caged-ATPと呼ばれる、光分解性のATP前駆体を用いて酵素:アナログ:caged-ATP複合体を結晶化した。そして、キセノンランプを用いたフラッシュ光分解により、caged-ATPからATPを一斉放出させることによって、結晶状態で目的とするリン酸転移反応を同調させる系を構築することができた。さらに、HPLCを用いて、caged-ATP、ATP、ADPの量的変化を追跡することにより、反応速度を求めた。その結果、20℃では、数秒で反応が終了することが判明した。しかし、-20℃に冷却することにより、半減期を3分程度まで遅らせることが出来た。
2.迅速X線結晶構造解析システムの構築
(1)X線回折強度データ測定速度の向上。
当初の計画では、CCD検出器を用いて、2秒以内に1枚のデータを測定できる系を構築する予定であったが、直前に、CCD検出器の故障が明らかとなり、測定に至ることが出来なかった。しかし、イメージングプレート(IP)を検出器とする装置を代わりに用いて測定時間の短縮を試みた。その結果、シンクロトロン放射光を用いることで、実験室系では10時間かかる測定時間を1時間まで短縮することが出来た。そこで、-20℃で結晶を冷却しながら、前述のグルタチオン合成酵素複合体の結晶について、フラッシュ光分解によって反応開始後、X線回折強度の測定を行ったところ、結晶中においても、溶液中と同様反応が進行し、リン酸化が終了した状態の構造を捕らえることが出来た。すなわち、この反応で得られた構造を、予め溶液中でリン酸化を行わせた後に結晶化した場合の構造と比較したところ、両者は完全に一致していた。
(2)低温下でのX線結晶解析システムの構築。
さらに、実質的な時間分解能を向上させるため、-160℃に至る温度まで結晶を冷却する系を構築した。そのためには、50%もの溶媒(水)を含む酵素の結晶を水が氷になることによって結晶が破壊されないように冷却しなければならない。すなわち、瞬間冷却によって、水をガラス状態へと一気に冷却しなければならない。条件検討の結果、ナイロンループに抄くい取った結晶を直接液体窒素中に漬けることで結晶性を損なうことなく-160℃まで冷却し、X線回折強度測定装置に装着した後は、冷却窒素を吹き付けることによって-160℃を保ち低温下での測定を可能とする実験システムを京都大学化学研究所に構築することが出来た。この実験システムは、グルタチオン合成酵素以外の酵素の結晶でも利用可能であり、汎用性のあることが判明した。
グルタチオン合成酵素による遷移状態アナログのリン酸化の系については、現在、キセノンフラッシュ光分解によって反応開始後、瞬間冷却によって反応をほとんど停止させた状態でX線回折強度を測定する系を開発中であり、その系が構築できれば、標的としたリン酸化直前の構造を捕らえるための方法は完成できたといえるであろう。

報告書

(1件)
  • 1995 研究成果報告書概要
  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] T.Hara,T.Tanaka,H.Kato,T.Nishioka,J.Oda: "Site-direded mutagnesis of glutathione Synthetase from Escherichia coli B : mapping of the r-L-glutdmyl-L-cysteine-binding site" Protein Engineering. 8. 711-716 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 加藤博章,小田順一: "有機化学とタンパク質結晶学-遷移状態アナログを用いて酵素反応機構を探る-" 日本結晶学会誌. 38. 99-104 (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] T.Hibi,T.Nishioka,H.Kato,K.Tanizawa,T.Fukui,Y.Katsube,J.Oda: "Structure of the multitunctional loops in the nonclassical ATP-binding fold of glutathione synthetase" Nature structural biology. 3. 16-18 (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] T.Hara, T.Tanaka, H.Kato, T.Nishioka, J.Oda: "Site-directed mutagenesis of glutathione synthefase from Essherichia coli B : mapping of the r-L-glutamyl-L-Cysteine-binding site" Protein Engineering. 8. 711-716 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] H.Kato, J.Oda: "Organic Chemistry and Protein Crystallography : Probing Enzyme Mechanism with Transition State Analogs" Journal of the Crystallographic Society of Japan. 38. 99-104 (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] T.Hibi, T.Nishioka, H.Kato, K.Tanizawa, T.Fukui, Y.Katsube, J.Oda: "strudure of the multifunctional loops in the non classical ATP-binding fold of glutathione synthetase" Nature structural biology. 3. 16-18 (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1995 研究成果報告書概要

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公開日: 1995-04-01   更新日: 2016-04-21  

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