研究課題/領域番号 |
07044197
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 維昭 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (90027334)
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研究分担者 |
吉久 徹 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (60212312)
JOHNSON A.E テキサスA&M大学, 教授
秋山 芳展 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (10192460)
JOHNSON A.E. テキサスA&M大学, 教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1996年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1995年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 膜タンパク質 / FtsH / SecY / タンパク質膜透過 / 分泌 / 大腸菌 / 蛍光標識 / タンパク質分解 / 分子シャペロン |
研究概要 |
本研究は、膜タンパク質がその生合成の過程で、いかにして特定の方向性を持って膜に組み込まれるかと言う問題を解決しようとしたものである。膜タンパク質は分泌タンパク質の膜透過と同様の機構により膜への挿入を起こすが、疎水性の膜貫通領域となるべき部位が膜透過装置(トランスロケーター)に挿入されたとき、膜透過を停止し(ストップトランスファー)、水平方向への脱出を起こすことにより、脂質2重層部分に組み込まれるとのメカニズムが、N末端を外側に配向する膜貫通部位の形成に働くものと考えられる。このような過程にいかなる細胞因子が関与するのかは、まだほとんど解明がすすんでいない問題であり、本研究でその解明を目指したものである。申請者らは、大腸菌を用いた分子遺伝学的解析から、膜結合ATPaseであるFtsHタンパク質が、膜タンパク質の組込みに関与する可能性を提唱した。FtsHの細胞機能を解明すると同時に他の膜組込み因子の探索、蛍光測定によるそれらの作用機作を解明する系の構築などを目指した。以下に主な成果を挙げる。 1.分泌蛋白質前駆体のシグナル配列直後の領域にヘキサヒスチジン配列を挿入すると、その膜透過がNi^<2+>により、膜への結合直後でシグナル配列の切断前の状態で可逆的に阻害できることを見いだした。この方法が膜透過中間状態の捕捉に有用であることを示した。 2.ストップトランスファー配列による膜組み込みを、試験管内反応でアッセイするためのモデルとなる前駆体として、分泌(外膜)蛋白質OmpAのC末端領域に内在性膜タンパク質出来の膜貫通配列を挿入したものを構築した。反転膜小胞を用いて、モデルタンパク質のストップトランスファー効率をアッセイする系を確立した。さらに、ストップトランスファー反応が、膜透過装置を構成するSecA,およびSecY-SecE-SecG複合体のみで充起こり得るかを検討するため、Secタンパク質を精製し、人工プロテオリポソーム膜に再構成する系を確立した。これを用いた解析により、ストップトランスファー反応が、膜透過装置を構成するSecA,およびSecY-SecE-SecG複合体のみで起こり得ることを示した。但し、脂質層への組込みに関しては的確なアッセイを行うには蛍光測定など物理化学的測定が必須であることも明らかになった。一方、上記のモデルタンパク質は、細胞内で発現させたときもin v itroと同様なストップトランスファーを起こしたが、やはり脂質2重層への組込みは安定には起こっていない事が示唆された。このタンパク質は細胞に著しい毒性を発揮し、膜組込みステップを阻害している可能性が明らかとなった。 3.FtsH蛋白質は、以前の研究で提唱した膜蛋白質の組み込みに関与するほか、SecYタンパク質やF_1F_0A TPaseのaサブユニットのようなある種の膜タンパク質サブユニットが複合体を形成し損なった時の分解を司っていることを見いだした。FtsHを精製し、ATPase活性を測定し、またATP依存性のSecY分解活性を持つことを証明した。FtsHはオリゴマー構造をしており、膜結合領域がFtsHサブユニット間の結合に重要であることを示した。一方、ftsH変異株におけるストップトランスファー欠損、分泌欠損の表現系が、それぞれ分子シャペロンH tpG(Hsp90相同体)、あるいはGroEによって特異的にサプレスされることを見いだした。FtsHはある種の変性タンパク質に分解することなく結合する性質があり、過剰生産したときに膜貫通部位の変異によりストップトランスファーが不全となった変異タンパク質のストップトランスファー効率を上げること見いだした。また、ftsHの優性欠損変異のマルチコピーサプレッサーとして新たな遺伝子FdrAを同定した。また、FtsHは膜タンパク質HflKCと複合体を形成すること、HflKCはFtsH活性の調節因子として働くことをin vivo,in vitroの実験で明らかにした。 4.大腸菌において膜透過チャンネルの親水・疎水環境を蛍光標識によって測定するための系の構築を行った。分泌タンパク質OmpAのC末端側にジスルフィド結合を形成させることにより膜透過中間体を蓄積させることを確認した。これの無細胞タンパク合成において、蛍光標識の成功が実証されている酵母由来のLysyl-tRNA,Cysteinyl-tRNAが働き得る事を見いだした。
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