研究課題/領域番号 |
07044202
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤島 政博 山口大学, 理学部, 教授 (40127783)
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研究分担者 |
FOKIN Sergei サンクトペテルブルグ大学, 生物学部, 研究員
SKOBLO Inna サンクトペテルブルグ大学, 生物学部, 研究員
RAUTIAN Mari サンクトペテルブルグ大学, 生物学部, 研究員
OSSIPOV Dmit サンクトペテルブルグ大学, 生物学部, 教授
BRIGGE Theod シュツッツガルト大学, 動物学部, 助手
GORTZ HansーD シュツッツガルト大学, 動物学部, 教授
石川 統 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (70012482)
堀 学 山口大学, 理学部, 助手 (00253138)
GORT HansーDi シュツッツガルト大学, 生物学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
5,800千円 (直接経費: 5,800千円)
1996年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
1995年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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キーワード | ゾウリムシ / ホロスポラ / プロトンポンプ / 細胞内共生細菌 / 核内共生細胞 / 原生動物 / 繊毛虫 / 感染 / 核内共生細菌 / groEL / ゲノムサイズ / 凍結保存 / モノクローナル抗体 |
研究概要 |
下記のことを明らかにした。 1.V-ATPase(プロトンポンプ)の阻害剤のコンカナマイシンA、コンカナマイシンB、バフィロマイシンA1存在下では、宿主ゾウリムシの食胞内pHの酸性化とホロスポラオブツサの食胞からの脱出が阻害される。ウシのクロマフィン顆粒のV-ATPaseに対する抗体を使った間接蛍光抗体法では、食胞膜にV-ATPaseが存在することが示された。これらの結果は、ホロスポラは、宿主食胞の酸性化を引き金にして、食胞から脱出することを示している。 In vitroで、感染型ホロスポラをpH低で処理すると、タンパク質組成の変化を伴って食胞から脱出した活性型に特異的な形態変化が誘導された。同時に、アンピシリンとクロラムフェニコール非存在下で活性型特異的抗原(AF-1抗原)の出現が誘導された。これらの結果は、低pHによる活性型特異的抗原の出現は、転写と翻訳を伴うことを示している。 2.増殖型のホロスポラオブツサは低温の4度だけでなく25度でも宿主の生存と細胞分裂速度を高める機能を果たしていることが分かった。どのような機構で宿主の生存と分裂を促進しているのかを明らかにすることは、寄生細菌から共生細菌への移行のしくみの例として今後明らかにされなければならない。 3.しかし、増殖型から感染型に分化すると、過剰合成した細胞壁物質(IR-4-1抗原)を菌体外に分泌して大核膜に沈着させ、たとえ細胞を固定やTriton-Xで抽出しても抗体を通過させないほど核膜の物質透過性を低下させることが分かった。ホロスポラが増殖型から感染型に分化すると、宿主の分裂速度と宿主の死亡が誘導されるが、その原因が菌体外に分泌された細胞壁物質による大核膜の物質透過性の低下であることがはじめて明らかになった。感染型ホロスポラは、増殖型の時とは反対に積極的に宿主を殺害し、これによって宿主外に脱出する機会を作っていると考えることができる。IR-4-1抗原を持たない突然変異株の感染型は宿主を殺害できなかったことは、上記の考えを支持している。 4.ホロスポラオブツサのストレスタンパク質のgroESとgroELの遺伝子をクローニングした。この遺伝子の塩基配列のホモロジーから、ホロスポラオブツサは、プロテアバクテリアのαグループに属し、寄生性細菌のリケッチアに最も近いことが明らかになった。 5.ホロスポラオブツサの感染型特異的4.5Kタンパク質を精製し、全アミノ酸配列の決定と遺伝子のクローニングを行った。免疫電顕は、抗原がオブツサのペリプラズムに存在することを示し、cDNAを使ったノーザンブロットは増殖型から感染型への分化途中で転写が開始し完了することを示した。このタンパク質の機能はまだ不明だが、大腸菌に発現させると細胞分裂が阻害されるので、増殖型から感染型に分化する際のホロスポラの細胞分裂停止の機能を果たしている可能性がある。 ゾウリムシのアクチンに対する抗体を使った間接蛍光抗体法と2次元電気泳動のイムノブロットは、ホロスポラオブツサが、この抗体と反応するタンパク質を持つことを示した。このタンパク質の性質と機能はまだ分からない。 7.パルスフィールド電気泳動によるH.undulata,H obtusa,H.rectaのゲノムサイズは、1800,1740,1800kpbでH obtusaのAT%は80であった。このAT%はミトコンドリアに近い価である。ゲノムのコピーを持つかどうかについてはまだ不明である。 8.ホロスポラオブツサから精製した67Kタンパク質に対するモノクローナル抗体IR-2-1は、ゾウリムシの収縮胞放射管のdecorated spongiomeのプロトンポンプと交差反応し、さらに、ゾウリムシ、テトラヒメナ、イモリ精子、細胞性粘菌、酵母菌、マウスミエローマのミトコンドリアとも交差反応することが明らかになった。ホロスポラのプロトンポンプが、収縮胞のプロトンポンプ(V-ATPase)やミトコンドリアのプロトンポンプ(F-ATPase)と共通の抗原決定基を持つことが示唆された。
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