研究課題/領域番号 |
07044204
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大野 素徳 九州大学, 理学部, 教授 (30038434)
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研究分担者 |
小川 智久 九州大学, 理学部, 助手 (80240901)
下東 康幸 九州大学, 理学部, 助教授 (00211293)
MENEZ Andre C. E. Saclay タンパク質工学研究所, 所長
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1995年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | ヘビ毒腺 / 分子進化 / ホスホリハ-ゼA_2 / 神経毒 / 加速進化 / 適応進化 / cDNA / isozyme |
研究概要 |
本研究は、我々がクサリヘビ毒腺ホスホリハ-ゼA_2 (PLA_2)アイソザイムで発見した "ヘビ毒腺アイソザイムは、加速的に進化し、多様な機能を獲得している"という分子レベルでの適応進化について、コブラ科タイコブラ(Najanaja kaouthia)及びグリーンマンバ (Dendroaspis angnsticeps)の毒腺PLA_2アイソザイム及び3本指型神経毒イソタンパク質の分子進化を調べ、加速的適応進化が他のヘビ毒や種に普遍的であることを証明するものである。 1.タイコブラ毒腺PLA_2アイソザイムのcDNAクローニング タイコブラ毒腺よりmRNAを抽出し、cDNAライブラリーを作製した。報告されているPLA_2アイソザイムのアミノ酸配列をもとに設定したプライマーを用いて、PCR法によりプローブDNAを調製した。このPCRプローブを用いライブラリーをスクリーニングし、50個のポジティブクローンを得た。このうち、数種について解析を行い、これまで2種のクローンについて全塩基配列を決定した。それぞれ成熟タンパク質領域で4アミノ酸が異なるタイコブラ毒腺PLA_2アイソザイムをコードしていた。塩基配列は、非翻訳領域のほか、翻訳領域においても高い相同性を示した。今後、さらにタイコブラ毒腺PLA_2アイソザイムcDNAの塩基配列を解析し、比較したい。 2.グリーンマンバ毒腺3本指型神経毒イソタンパク質のcDNAクローニングと進化学的数理解析 グリーンマンバ毒腺よりmRNAを抽出し、cDNAライブラリーを作製した。これまで4種の3本指型神経毒イソタンパク質cDNAがクローニングされているが、グリーンマンバ毒中にはさらに多くの異なる機能をもつイソタンパク質が含まれている。今回、cDNAライブラリーをスクリーニングし、新たに5種の3本指型神経毒イソタンパク質cDNAの塩基配列を決定した。この中には、これまで一次構造が明らかな3本指型神経毒イソタンパク質とは相同性があまりない(60%)クローンが得られた。また、分子内ジスルフィド結合が一つ多いイソタンパク質cDNAクローンも得られた。これらは、全く新しい3本指型神経毒イソタンパク質であるため、その機能について興味がもたれる。今回決定した塩基配列を含め、3本指型神経毒イソタンパク質の成熟タンパク質翻訳領域の塩基の置換は、5'及び3'非翻訳領域及びシグナル配列部分の塩基置換よりもかなり多いことがわかった。 3.遺伝子塩基配列比較の進化学的数理解析 Nei-Gojobori法による塩基配列の進化学的数理解析の結果、成熟タンパク質翻訳領域において、同義座位の塩基の相違度(K_S)に対する非同義座位の塩基の相違度(K_A)の比は1を越え、加速進化を示した。これらの結果は、多様な生理機能をもつ3本指型神経毒イソタンパク質においても、クサリヘビ科毒腺PLA_2アイソザイムと同様、遺伝子を加速的に進化させているこを示す。 コブラ科及びグリーンマンバヘビ毒腺においてもアイソザイム・イソタンパク質の適応進化が示され、今回の研究の目的である適応進化による機能獲得がヘビ毒腺アイソザイム・イソタンパク質に普遍的であることが証明された。 また今後は、これらの結果から塩基置換の詳細な比較により、各毒腺アイソザイム・イソタンパク質間での共通性などを明らかにし、この加速進化の機構解明へとさらに展開したい。
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