研究課題/領域番号 |
07044208
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
古賀 洋介 産業医科大学, 医学部, 教授 (70012458)
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研究分担者 |
WHITMAN W.B. ジョージア大学, 微生物学教室, 教授
森井 広幸 産業医科大学, 医療技術短大, 助手 (60141743)
西原 正照 産業医科大学, 医学部, 助教授 (20131930)
NISHIHARA M. Univ.Occupational and Environmental Health Professor
MORII H. Univ.Occupational and Environmental Health Professor
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1995年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 古細菌 / メタン生成細菌 / エーテル脂質 / 化学分類 / 16SrRNA / 系統分類 / Methanosarcinales / Methanocaldococcaceae |
研究概要 |
メタン菌は古細菌の一種で、そのユニークな性格は進化研究、環境問題、バイオテクノロジーなどに対して潜在的可能性を秘めている。すべてのメタン菌研究の基礎として適切な分類が必要である。現行のメタン菌の分類は1979年にBalchらによって与えられた。しかし、現存メタン菌の8割近くがその後に発見され、分類の再検討が必要になっている。現代的分類にはrRNAの塩基配列比較などの系統的方法とともにそれと合致する適切な表現形質の比較も必要である。本研究はWhitmanによる16SrRNAの塩基配列の比較による分類と古賀らによる表現形質のひとつとしての脂質分析に基づく分類研究を、両者の共同研究として発展させ、メタン菌の目(order)および科(family)レベルの分類について整理することを目的として実施した。 Whitmanは、16SrRNAの全塩基配列の解析を多くのメタン菌について進め、古賀と日本人研究分担者は各種メタン菌の全脂質レベルでの脂質構成部品分析を行なった。培養困難な一部の菌種(Methanococcus maripaludis,“Methanococcus aeolicus“,Methanocorpusculum parvum,Methanoplanus limicola)についてはWhitmanの研究室で培養した菌体が供給された。脂質分析のための各種メタン菌を乾燥菌体重量2gづつ培養した。 メタン菌の膜極性脂質はグリセロールエーテルを骨格として糖および水溶性化合物のリン酸エステルが結合している。これまでに7種のメタン菌の脂質構造が決定されたが、分類学に脂質構造を応用するには、完全構造決定は不適当である。そこで我々は脂質構造の特徴を簡便に把握する方法として極性脂質の構成部品(脂質骨格、糖、ホスホジエステル結合極性基)の有無だけを全脂質レベルで分析する方法を開発した。すなわち、各メタン菌から抽出した全脂質レベルで以下の分析を行い、構成部品の有無を記録する。1)HF分解で調製した脂質骨格を蛍光ラベルした後、高速液体クロマトグラフィーで微量分析する。2)糖脂質の糖成分を加水分解により調製し、還元後アセチル化してガスクロマトグラフィーで分析する。結合位置、アノマー分析は行わず、単糖の種類だけ記録する。3)BCl_3でエーテル結合を分解し、グリセロホスホスジエステルを調製し、セルロース薄層クロマトグラフィーおよび薄層プレート電気泳動により、極性基の種類を同定する。脂質部品の分布はメタン菌の目(order)および科(family)という高次のレベルの分類群に特異的で有用な分類基準となる表現形質であることが判明した。 Whitmanとの共同研究により、これまで我々の研究室では培養困難のため、脂質データが得られなかったメタン菌についても分析を行うことができた。それらを加えて、現行分類で正式に認められている3目7科20属67種のうち、37種42株のメタン菌の極性脂質の構成部品(脂質骨格、糖、ホスホジエステル結合極性基)の分布状況を把握することができた。その結果は次の通りにまとめることができる。第一に、Methanomicrobiaceae科とMethanosarcinaceae科のメタン菌では、いずれの脂質部品をとっても全く異なっており、細胞の形態、生育のための基質等でも根本的に異なり、16SrRNAの塩基配列の比較による系統分類の結果もこれらのことと対応し、別の目として独立させてしかるべきであることが明らかになった。すなわち、系統関係、表現型両面からMethanosarcinaceae科を新しい目すなわちMethanosarcinalesとして確立することとした。第二に、Methanococcus属のメタン菌の脂質分析とrRNA分析も同様に進め、Methanococcus属の超好熱性の2種を新科Methanocaldococcaceaeに、中等度好熱性の1種を新属Methanothermococcus属に再分類することとした。第三に、RNA分析ではMethanobacteriumの好熱性の種を別の属に、またMethanospirillum属をMethanomicrobiaceae科から独立させ別の科にする、というRNA分析からの結論は脂質分析では確認出来ず、両方法の相違点となった。反対に、Methanosaeta属の好熱性の種は中温性の種と脂質部品が異なっており、別属の可能性を見出し、RNA分析に再検討を促した。現在、新分類提案の論文を準備中である。なお、この方法は自然界からの新分離メタン菌株の同定にもすでに応用されて有用性が確かめられた。
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