研究課題/領域番号 |
07044209
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
池村 淑道 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 教授 (50025475)
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研究分担者 |
BIRD A. エジンバラ大学, 細胞分子生物学研究所, 教授
白吉 安昭 国立遺伝学研究所, 遺伝実験生物保存研究センター, 助手 (90249946)
中辻 憲夫 国立遺伝学研究所, 遺伝実験生物保存研究センター, 教授 (80237312)
松本 健一 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 助手 (30202328)
CHIQUETーEHRI エリスマン アール フリードリッヒ, ミーシャン研究所, Staff Scie
SHIRAYOSHI Y. NATIONAL INSTITUTE OF GENETICS
CHIQUET-EHRISMANN R. Friedrich Miesher Institut
MATSUMOTO K. NATIONAL INSTITUTE OF GENETICS
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 細胞外マトリックス / テネイシン-C / テネイシン-X / テネイシン-R / 遺伝子破壊 / CpGアイランド / ES細胞 / キメラマウス |
研究概要 |
細胞外マトリックスタンパク質・テネイシン(:TN-C)は初期発生及び器官形成時に顕著に発現する細胞外マトリックスタンパク質として知られ、形態形成に重要な役割を演じると考えられている。生体内でのTN-Cの機能を知る目的で、理化学研究所のグループによりジーン・ターゲティング法でTN-C欠損マウスが構築された。ところが予想に反し、TN-C欠損マウスは正常に器官形成が進行し成体に成長することが明らかとなった。そのような状況の時に相次いで二種類のテネイシン様分子が見いだされた。一つはスイス、ドイツのグループにより中枢神経系特異的に発現するテネイシン様分子でレストリクチンあるいはJ1-160/180と名付けられ、最近テネイシンR(TN-R)と改名された。もう一種類は、我々により主要組織適合性抗原遺伝子群(MHC)のクラスIII領域に遺伝子を見い出されたテネイシンX(TN-X)である。従来から研究されているTN-Cそして新たに見いだされたTN-X及びTN-Rより成るテネイシンファミリーとして総合的に理解することが、これらの機能を考えるうえで重要となってきた。我々はテネイシンファミリーの総合理解の目的で、平成7年度にスイス国バ-ゼルにあるフリードリッヒ・ミ-シャー研究所に所属するChiquet-Ehrismann博士と共同研究を行なった。我々は、TN-Xの機能解析の目的で、以下のようにTN-X欠損マウスを作成した。ES細胞由来のゲノミック・ライブラリーより、TN-X遺伝子の5'プロモタ-領域及び5'コーディング領域の約30kbのクローニングを行い、相同領域の異なった3種類のターゲティング・ベクターの構築を行なった。次にエレクトロポレーション法によりES細胞にターゲティングベクターの導入を行ない、相同組換えを起こした複数個のES細胞を得た。この相同組換えの起きたES細胞を用い、インジェクション法によりキメラマウスの作成を行なった。どの独立したES細胞由来のキメラマウスにおいても、ES細胞の寄与の低いキメラマウスは得られたが、寄与の高いキメラマウスは得られず胎児期の13日目から16日目の期間に死ぬことが明らかとなった。この時期の正常胎児においてはTN-Xは心臓で特に強い発現が見られることを見いだしている。キメラマウスの胎児期においてどうして致死に至ったかをさらに詳細に検討する必要があるが、現在2つの可能性を考えている。1つ目の可能性としては心臓などのTN-Xの発現の多い器官のTN-X欠損細胞では、TN-X量が半分になるため異常が生じた可能性、2つ目としてはターゲティングベクターとしてPGKプロモーター及び翻訳終始コドン付きのNeo耐性遺伝子を翻訳開始コドンを含む領域に変換したものを用いたため、強力なPGKプロモーターより合成されたdominant negativeタイプの変異をもった異常TN-Xが多量に作られその結果として致死に至った可能性が考えられる。 Chiquet-Ehrismann博士はTN-Xの遺伝子発現の制御機構に関する研究を行なった。TN-Xは繊維芽細胞などの非上皮細胞のみならず、腎癌由来RenCa細胞や神経膠種由来の203gliomaなどの上皮(癌)由来細胞にも発現が認められた。これらの培養細胞におけるTN-X発現に関わる分子を明らかにするため、既存のTN-C発現誘導因子であるTGF-b、HGF、PDGF、EGF、bFGFを、また抑制因子として知られているglucocorticoidを培養細胞に添加しTN-X蛋白産生の変化を調べた。TN-X発現は血清濃度に依存して発現誘導が見られたが、上記のどの因子に対しても発現誘導は認められなかった。しかしながらglucocorticoidにより強いTN-Xの発現抑制が見られた。これらのことによりTN-X遺伝子の発現制御機構はTN-Cのそれとは異なっていることが明らかとなった。現在この現象がin vivoでも見られるかどうかを癌細胞のヌードマウスへの移植実験で調べているところである。今後さらにChiquet-Ehrismann博士と連絡を密にし、テネイシンファミリーの機能解明に迫りたい。TN-X遺伝子のイントロン部位に大型のCpGアイランドの存在を見いだしており、このCpGアイランドの遺伝子発現の制御におけ役割が興味深い。Dr.BirdはCpGアイランドの発見者であり、その構造と機能に関する研究成果が蓄積している。連絡を密に取りながら、TN-X遺伝子の大型CpGアイランド部位の機能破壊実験を進めている。 以上の研究成果の一部は、既に外国専門雑誌(Journal of Cell Science)に受理され、現在印刷中である。
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