研究課題/領域番号 |
07044211
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
三室 守 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (40142004)
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研究分担者 |
PLUMLEY Fran アラスカ州立大学, 海洋学部, 助教授
GANTT Elisab メリーランド州立大学, 植物学, 教授
池内 昌彦 東京大学, 教養学部, 助教授 (20159601)
PLUMELY Francis G. Dept.Oceanography, Univ.Alaska
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1995年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 光合成 / 進化 / 葉緑体 / 藻類 / 細胞内共生 / 光捕集系複合体I / シトクロムc550 |
研究概要 |
葉緑体の起源は単元説と多元説があり、長い間論争が続いている。葉緑体核に存在する遺伝情報を基にして考えた場合、単元説が有力と考えられる。しかし、異なる方法によってこの仮説を検討することが重要である。そこで、葉緑体で機能するタンパク質、または葉緑体に存在する物質を基に葉緑体の起源を実験的に検討することを試みた。解析の対象としたものは、1.アンテナ色素タンパク質、2.電子伝達を担うタンパク質である。前者は高等植物の場合、核にその遺伝子が存在し、後者は葉緑体、または核にその遺伝子が存在する。 1.藍色細菌が真核生物と共生することで誕生したと考えられている紅藻の光化学系Iアンテナ色素タンパク質(LHC 1)について、その性質を検討した。この色素タンパク質は藍色細菌では抗体を用いた検出方法では見いだされていないので、葉緑体の出現と同時に獲得された、と考えることができる。 紅藻Porphyridium cruentumから分離したLHC 1は高等植物のLHC 1に対して作られた抗体と反応することから同じモチーフを持つことが明らかであるが、色素組成は異なっている。特にカロテノイドが、高等植物の場合はβ-カロチンであるのに対して、ゼアキサンチンが多いという際だった特徴を示す。三室はメリ-ランド州立大学でガントとの共同によりこの性質を解明し、色素間でのエネルギー転移が起こることを、液体窒素温度での蛍光測定から明らかにし、この色素複合体が機能を持つことを明確に示した。 2.池内はアラスカ州立大学のプラムリ-との共同研究で、藻類の系統性の中で、特異の進化を遂げた黄色藻類について、LHC 1の検討を行った。珪藻Cylindrotheca sp.について、もっとも基本的な問題である光化学系1複合体の単離方法を検討した結果、タンパク質の純度の高い光化学系1複合体を初めて単離・精製することに成功した。また、そのアミノ酸配列の解析から、既知の光化学系1サブユニットの配列(psaD)とともに、未知の配列をもいくつか得られた。また、光化学系1、光化学系2の共通のアンテナとしてのFacタンパク質の配列も複数決定することができた。 3.電子伝達成分として、cytochrome c_<550>について、種々の藻類での存在を明らかにする事を試みた。この成分は、藍色細菌では酸素発生系において機能することが示唆されているが、本来は必要とされないヘムを持つことから、その機能について様々な議論がなされてきた。また、抗体での検出がかなり困難であることが知られているので、分光学的な方法によって、低い酸化還元電位を持つ成分を精度良く検出することが求められた。 そこで、三室とガントは紅藻P.cruentum についての測定を開始した。アメリカでは他のシトクロム成分(cytb_<559>,cyt b_6,cyt c_<553>)を検出することができた が、問題とするcyt c_<550>を検出することはできなかった。そこで、ガントが日本を訪れた時に、感度の高い分光光度計を用いて測定することによって、P.cruentum細胞抽出液の上澄に、この成分を検出することができた。今後は光化学系2反応中心との化学量論を決定することが重要であるとの認識で一致し、解析を行うことを予定している。 4.池内とプラムリ-は、新しい藻類として、ラフィド藻のHeterosigma sp.を研究対象として選び、培養を始め、生化学的研究に耐える高密度培養の条件を検討したが、十分の結果を得るには至らず、今度も継続することを確認した。 5.この共同研究への参加者全員が、今後も共同研究継続することを確認した。特に以下の項目について重点的に行う。光化学系1のコア複合体について複数の未知成分が見つかったので、遺伝子の単離も含めてその構造と機能の解析を続ける。Facタンパク質の配列の解析が容易であることがわかったので、その多様性を、ラフィド藻のHeterosigma sp.などを含めた他の真核藻類にまで研究対象を広げ、その意義を生化学的に解析していく。LHC1についても同様に行う。cyt c_<550>について、その生理学的な機能を反応中心との関連で解析する。
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