研究課題/領域番号 |
07044218
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田村 眞理 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (20124604)
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研究分担者 |
阿部 すみ子 福島県立医科大学, 助手 (50136975)
柳川 右千夫 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (90202366)
小林 孝安 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (10221970)
COHEN Philip ダンディー大学, 医学部, 教授
LYNCH Kevin バージニア大学, 医学部, 準教授
LARNER Josep バージニア大学, 医学部, 教授
平賀 章 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (80134047)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
1996年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1995年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
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キーワード | インスリン作用 / インスリンメディエーター / カイロイノシトールグリカン / プロテインホスファターゼ / 酵素活性 / 点突然変異 / 除去変異 / インスリン / イノシトールプロテオグリカン / ゲノムDNA / プロモーター領域 |
研究概要 |
プロテインホスファターゼ2C(PP2C)は、細胞内の4種類の主要なプロテインセリン/トリオニンホスファターゼ(PP1,2A,2Bおよび2C)のうちの1種であり、細胞機能の制御因子として生理的に重要な役割を担っている。我々はこれまで、PP2Cの生理機能解明を目的として、生化学および分子生物学研究を進めてきた。 一方、米国バージニア大学ジョセフ・ラーナー博士は、インスリンの標的細胞における作用の分子機構に関する研究の第一人者であり、細胞内におけるインスリンメディエーターの存在の提唱者である。博士らの研究により、カイロイノシトールグリカン(CIG)がインスリンメディエーターとして機能することが明らかにされ、またこれまでの博士と我々との共同研究により、PP2CがCIGのターゲット分子となっている可能性が示唆された。そこで、過去2年間、我々はLarner博士との共同研究をさらに押し進め、PP2のインスリンの作用点としての機能の分子機構を解明する為に、分子内突然変異導入によるPP2Cの機能ドメインの解析と、突然変異導入分子に対する、カイロイノシトリグリカン(CIG)の添加効果についての検討を行った。 これまで、PP2Cには異なった遺伝子産物である2種類の分子種(PP2C_αおよびPP2C_β)の存在が知られていたが、最近、我々はPP2C_βには単一のpre-mRNAの選択的スプライシングの結果生ずる、5種類のアイソフォーム(_<β-1、-2、-3、-4>および_<-5>)が存在すること、および人工基質を用いた検討により、それらは異なった基質特異性を示すことを明らかにした。さらに機能ドメイン構造を明らかにする目的で、PP2C_<β-1>分子に突然変異を導入した変異分子種を大腸菌で発現させて解析を行った。その結果、PP2C_<β-1>のN末から11個以上のアミノ酸除去することにより活性は完全に失われたが、C末端領域は100個のアミノ酸を除去するまでは活性は失われなかった。以上の結果からN末端側4/5の領域(約300アミノ酸)が活性ドメインを構築することが明らかとなった。 次に活性ドメインの中で様々な生物種由来のPP2Cに保存されているアミノ酸のうち、16個についてそれぞれを他のアミノ酸に置換した変異分子を大腸菌で発現させ、それらの酵素活性を測定した。その結果、これらの16個のうちいずれのアミノ酸を変異させた場合も活性の低下が観察されたが、特にAsp38,Asp60,His62,Arg179,Arg200およびAsp243を変異させた場合、活性がほぼ完全に失われることが判明した。 PP2C_αおよびPP2C_βの各アイソフォームに対する、カイロイノシトールグリカン(CIG)の添加効果を検討した。その結果、通常のアッセイの場合、PP2Cは活性発現に高濃度(10mM)のMg^<2+>の存在を必要とするが、CIGを添加すると、いずれの分子種もMg^<2+>濃度が極めて低い(50μM)状態においても、高い活性も示すことが明らかとなった。 また、活性ドメインに突然変異を導入した16個の分子種、および、N末およびC末の一部を除去した変異体に対するCIGの活性効果を検討したところ、酵素活性を保持している変異体はすべてCIGによる活性促進効果が観察された。しかしながら上記6種類の活性を保持していない点突然変異体、および、活性を示さないN末やC末の除去変異体に対しては促進効果は見られなかった。これらの結果は、インスリンメディエーターとしてのCIGが、PP2Cの生理的な活性化因子として機能すること、およびCIGの作用点が活性ドメイン内に存在することを強く示唆している。 以上の成績に基づき我々は、発生工学的手法を用いてPP2C高発現のトランスジェニックマウスやPP2C遺伝子破壊マウスを作製し、PP2Cのインスリン作用点としての機能を解明することを目的に研究を進めている。
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