研究課題/領域番号 |
07044228
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北島 健 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80192558)
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研究分担者 |
井上 貞子 昭和大学, 薬学部, 助教授 (00053827)
TROY Frederi カリフォルニア大学, 医学部, 教授
ROTH Jurgen チューリッヒ大学, 病理部門, 教授
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1995年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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キーワード | KDN-複合糖質 / 抗ポリKDNモノクローナル抗体 / KDN-切断酵素 / 哺乳動物 / 腫瘍細胞 / 癌胎児性抗原 |
研究概要 |
多細胞生物に見られる細胞の移動・認識・接着・浸潤などの細胞間相互作用において、細胞表面局在分子が重要な役割を担っており、中でも複合糖質糖鎖の制御的役割の重要性が認識され始めている。我々は、魚類を用いた研究から、細胞間相互作用を制御する複合糖質の新しい構成単糖としてKDNを発見し、更に、最近、哺乳動物の正常細胞、ヒト腫瘍細胞にもKDNが微量に存在することを免疫化学的に証明した。本研究は、哺乳動物における新規な糖残基であるKDN残基の機能、存在意義を解明することを目的として取り組み、以下に項目別に記載するような実績をあげることができた。 1.哺乳動物組織・細胞におけるKDN-複合糖質の分布: (1)哺乳類におけるKDN残基の存在は微量であり、まず、KDNを微量で検出する方法の確立した。遊離のKDNを蛍光標識し、HPLCによって分離、検出する方法を開発した。その方法によって、ブタ、ラットの各組織においてKDN残基の存在を生化学的、化学的方法によって確実に証明した[共同研究者の井上貞子博士によって遂行された]。 (2)KDNのオリゴマー構造に特異的な単クローン抗体として開発されたmAb.kdn8kdnの抗原特異性を、重合度の異なる一連のオリゴKDNを脂質に共有結合させたオリゴKDN脂質との反応性をELISA法で調べた結果、この抗体がα2→8-結合KDNダイマー以上の長さを認識することが明らかとなった。 (3)KDN残基特異的な加水分解酵素(KDNase)の調製法および利用法の確立。先に、我々が土壌バクテリア中に同定したKDN残基特異的な加水分解酵素KDNaseを高純度に精製する方法を確立した。この酵素が誘導酵素であるため効果的な誘導試薬の開発が重要なステップであった。また迅速な調製法の開発によって、組織切片、ブロッティング膜、プラスチック表面に固相化した抗原物質を免疫学的な手法によって検出する時の、コントロールとしての利用が可能になった。 (4)上記の単クローン抗体とKDNaseを組合わせて用いることによって、ラットの様々な組織、細胞にオリゴKDN構造の存在が明確となった。 (a)オリゴKDN構造は、組織免疫学的にみて、粘膜産生細胞、細胞外マトリックス、基底膜を除く全ての組織に存在する;(b)この糖鎖抗原は、骨格筋、腎臓、肺、および脳における出現は、発生過程段階に依存して制御されている;(c)組織分布は広いが、免疫ブロッティング法で調べると、特定の糖タンパク質上にのみこの糖鎖抗原が発現している。即ち、腎臓では、分子量35万以上の糖タンパク質上に、それ以外の組織では、15万の糖タンパク質上に主として存在する。これらの免疫組織学的実験は、スイスの共同研究者Jurgen Roth教授との共同で行った。 2.腫瘍細胞におけるKDN-複合糖質:独自に開発した上記の化学的検出法および免疫学的検出法を用いて、腫瘍細胞におけるKDNの存在を調べた結果、いくつかの悪性腫瘍細胞において、KDNの存在が明らかになった。特に、数種の腫瘍細胞における存在は、正常発生におけるオリゴKDN構造の出現が、胎生期に限定され、成体では消失するパターンを示すことと考えあわせると、癌胎児性抗原として位置づけられ、興味深い。すでに、シアル酸のポリマー構造が腎臓において、癌胎児性抗原であることが明らかにされており、シアル酸、KDNの腫瘍マーカーとしての意義に加えて、機能的な重要性を示唆している。 3.KDN-複合糖質の発現制御機構: これまでに、KDN残基がCMP-KDNをドナー基質とするKDN-転移酵素によって形成されることを明らかにしてきている。動物細胞系で、まず単糖KDNがどのように形成されるかが発現制御機構を考える上で重要であり、その解明に取り組んだ。その結果、マンノース 6ーリン酸とホスホエノールピルビン酸から、単糖KDN9ーリン酸を形成する酵素活性の同定に成功した。この酵素が細胞におけるKDN単糖の発現に重要であると考えられる。この研究は、主として米国の共同研究者Frederic A.Troy教授と共同して行った。
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