研究課題/領域番号 |
07044238
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
武田 龍司 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (80020791)
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研究分担者 |
JACQUIN Thie CNRS/I.A.F./Neurophysiol., Director
CAHMPAGNAT J CNRS/I.A.F./Neurophysiol., Director
DENAVIT SAUB CNRS/Inst.Alfred Fessard, Chief Dire
岡崎 真理 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (50272901)
櫨 彰 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (50228433)
DENAVIT SAUBIE Monigue C.N.R.S./Institute Alfred Fessard/Gif-sur-Yvette Chief Director
CHAMPAGNAT Jean C.N.R.S./Institute Alfred Fessard/Gif-sur-Yvette Director
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1995年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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キーワード | 呼吸中枢 / 呼吸リズム / 呼吸性ニューロン / シナプス後電位 / NMDA受容体 / AMPA受容体 / GABA-A受容体 / 迷走神経 |
研究概要 |
呼吸運動は、呼吸中枢で形成される自動的かつ周期的な神経活動によって制御されている。呼吸中枢は機能的に異なる幾つかのサブシステムから構成されているが、その中核を成すのはリズム形成機構である。一呼吸周期は吸息・呼息1相・呼息2相の3相から成り、呼吸リズム形成機序の最重要ステップは各呼吸位相の切り替え、とりわけ吸息から呼息への切り替え過程であり、この過程に関わる神経機序を吸息オフ・スイッチ(inspiratory off switch;IOS)機構と言う。近年、仏側共同研究者らは、このIOSとグルタメイト受容体サブタイプNMDA受容体との関係を示す重要な実験事実を初めて報告した。本研究は、IOSとNMDA受容体との関係に焦点を絞り、自発性IOSと末梢神経求心性刺激による誘発性IOSの伝達様式と関与するグルタメイト伝達機構及びその受容体サブタイプの機能解明を目的に、仏側の研究実績に日本側独自の実験技術を応用した共同研究を行い、以下の成果を得た。 1.迷走神経性入力を遮断した成熟ネコに、NMDAアンタゴニストdizocilpineを静脈内注射すると、横隔神経の呼吸性放電活動は特異な持続性吸息(apneusis)パターンに変化した。この呼吸型は、IOSが特異的に抑制されて吸息から呼息への切り替えが遅延したことに起因するもので、吸息相活動の著名な延長と振幅減少並びに定状振幅化(plateau化)及び呼息1相活動の短縮と振幅減少を特徴とし、横隔神経放電が完全休止する呼息2相は変化しなかった。 2.延髄呼吸中枢領域より記録した吸息性(I)ニューロンにおいては、吸息相(apneusis相)では漸増型であった脱分極電位の振幅が減少してplateau状に変化し、自発放電はほぼ全例で停止した。また、呼息1相の過分極電位の振幅及び持続時間も著明に減少した。また、apneusis相では入力抵抗が182%に増加した。一方、呼息1相性(PI)ニューロンにおいては、呼息1相の脱分極電位の振幅減少と持続時間短縮並びに入力抵抗の増加(190%)が認められ、自発放電は停止した。Apneusis相では過分極電位の振幅減少及び入力抵抗の増加(175%)が認められた。両タイプのニューロンともに、呼息2相の膜電位及び入力抵抗の変化は軽度(15-19%)であった。すなわち、dizocilpineの静脈内投与によって、IOSに関与する2タイプの呼吸性ニューロンにおいて、その活動相(脱分極相)においては脱促進(disfacilitation)が、非活動相(過分極相)においては脱抑制(disinhibition)が起こり、これがIOSを遅延させapneusisを惹起させる原因であると結論された。 3.迷走神経あるいは上喉頭神経の求心性電気刺激により、横隔神経の吸息性活動には一過性の抑制(可逆性IOS)あるいは完全な呼息への切り替え(非可逆性IOS)を誘発することが出来る。これら誘発性IOSに伴ってI及びPIニューロンには、それぞれ一定の潜時とパターンでEPSPsとIPSPsの混合したシナプス後電位が誘発される。細胞内記録電極と多連薬物電極を組み合わせた同軸型多連電極を用いて記録したニューロンに対して興奮性および抑制性伝達物質のアンタゴニストを投与した結果、誘発性EPSPsはグルタメイト受容体サブタイプAMPA作動性であり、誘発性IPSPsはGABA-A作動性であることを示す成績が得られた。 4.末梢神経刺激による可逆性及び非可逆性IOSは、dizocilpine静注により引き起こされたapneusisにおいても容易に誘発することが出来た。Dizocilpine静注後、ニューロンにおいては誘発性EPSPsの振幅は増加し、IPSPsの振幅は軽度に減少した。しかし、PIニューロンに誘発されたEPSPs及びIPSPsの振幅には、有為な変化が認められなかった。この事実は、IOSに関与するNMDA作動性機構は、Iニューロンに対して抑制的に作用しているプレシナプス回路においてより選択的に働いており、PIニューロンに対する直接的な影響は弱いことを示している。 5.現在、機能的に同定した呼吸性ニューロンの細胞内色素注入法及びNMDA受容体標識プローブを用いた蛍光染色法を応用して、IOSに関与するNMDA作動機構の局在部位と構造について、機能形態学的研究を進めている。
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