研究課題/領域番号 |
07044239
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中沼 安二 金沢大学, 医学部, 教授 (10115256)
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研究分担者 |
斉藤 勝彦 金沢大学, 医学部, 非常勤講師 (10205635)
佐々木 素子 金沢大学, 医学部, 助手 (70225895)
寺崎 修一 金沢大学, 医学部, 助手 (10251943)
寺田 忠史 金沢大学, 医学部, 助教授 (30188677)
GERSHWIN M E 米国, 加州大学・Davis校, 教授
MERIC Gershwin UNIVERSITY OF CALIFORNIA DAVIS
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
1995年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
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キーワード | 原発性胆汁性肝硬変 / 抗ミトコンドリア抗体 / 共焦点レーザー顕微鏡 / 小葉間胆管 / 胆汁 / ピルビン酸脱水素酵素 / 免疫組織化学 / ALYマウス / Immunopathological |
研究概要 |
【目的】 PBCの患者血清中には自己抗体である抗ミトコンドリア抗体(AMA)が高率かつ特異的に出現する。この抗体の対応抗原であるピルビン酸脱水素酵素複合体のE2成分(PDC-E2 が、最近、PBCの肝内の障害胆管上皮に異常にあるいは過剰に発現する現象が注目されている。この現象の解析を試みた。 【材料・方法・結果】 1.肝内小葉間胆管の胆管上皮でのPDC-E2発現の検討:PDC-E2のinner lipoic domainを認識することが知られているモノクローナル抗体であるC355.1(米国の共同研究者が作成)を用い、材料はPBCの肝11例と慢性肝炎などの対照肝12例の凍結肝切片である。方法は酵素抗体間接法(ABC)、共焦点レーザー顕微鏡、免疫電顕である。一次抗体としてC355.1を使用した。主に肝内小葉間胆管、肝細胞、浸潤単核細胞、血管平滑筋に種々の強さで陽性像がみられた。PBCでは、小葉間胆管に強い発現がみられ、特に核上部の胞体で明瞭であった。非PBC症例の小葉間胆管では、少数の小葉間胆管が陽性であったが、弱陽性〜陰性の小葉間胆管が多くみられた。なお、グ鞘周囲の肝細胞と増生細胆管には、症例、疾患に関係なく、強い発現がみられた。 2.肝内小葉間胆管の胆管上皮でのPDC-E2mRNAの発現:in situ hybridization法を用い検討した。材料はPBC肝11例と慢性肝炎等の対照肝12例の凍結切片を用いた。in situ hybridization法として、PDC-E2のinner lipoic domain領域に対するRNAプローブ(ジゴキシゲニン(DIG)標識でハイブリダイゼーション後、免疫染色でDIGを検出した。mRNAのシグナルは、肝細胞、増生細胆管、浸潤単核細胞に明かな陽性像があったものの、小葉間肝胆管ではPBCおよび非PBC症例共に、弱陽性〜陰性であった。 3.胆汁中のPDC-E2の検出:ウェスタンブロット法で検出を試みた。材料はPBCの胆嚢胆汁4例(肝移植時に採取)と肝内結石症の胆管胆汁4例 (肝切除術時に採取)を用いて、PDC-E2の一次抗体C355.1を用いて。なお、発色はABC法で行った。PBCの胆汁では、4例全例で74kDの部位に陽性のバンドがみられた。しかし、肝内結石症例では、この部には陽性のバンドがみられなかったので、PBCに特徴的と考えられた。 4.動物モデルの開発:液性免疫の異常、IL-2の産生障害を来すALYマウスを用い、PBCのモデル動物の作成を試みた。自然発生的に、肝内胆管のレベルに非化膿性胆管炎が誘導された。また、胆管上皮に従来、報告のない好酸性変性像がみられた。 【考察と結論】 肝凍結切片による検討で、PBCの小葉間胆管にはPDC-E2を認識するモノクローナル抗体と反応する物質の発現がみられた。他の疾患の小葉間胆管でもこの物質の発現があったが、軽度あるいは散在性に分布していた。この事より、PBCの障害胆管でのPDC-E2の発現がPBCに特異的とは言えないが、PBCでその発現が亢進していることが示唆された。 しかし、PBCおよび非PBC症例において、肝細胞と増生細胆管にもPDC-E2反応性物質の発現が同様にみられた。このことは、このPDC-E2反応性物質そのものの発現は肝細胞や細胆管では非特異的なものであることを意味している。特に、増生細胆管では疾患に関係なくPDC-E2の発現が増強している現象はPDC-E2発現の実態を知る上で重要な所見の1つと思われる。 次に、PBCの胆汁中にモノクローナル抗体でPDC-E2と思われる物質が検出されたが、対照例では検出されなかった。このことは、PBCの胆汁中にPDC-E2あるいはその類似物質が多く存在することを意味する。なお、PBCの小葉間胆管にはPDC-E2を認識するmRNAを検出出来なかったので、これらの物質は胆管上皮が産生している証左は得られなかった。むしろ、胆汁中のPDC-E2が吸収されている可能性も今後、検討する必要があると思われた。 最後に、PBCの慢性非化膿性胆肝炎に似た動物モデルの作成に成功した。今後、種々の免疫学的操作を加え、PBCの胆肝炎により似たモデルの作成を行う。
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