研究課題/領域番号 |
07044244
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
児玉 逸雄 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (30124720)
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研究分担者 |
BOYETT Mark リーズ大学, 生理学, 教授
本荘 晴朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (70262912)
外山 淳治 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (20023658)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1996年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1995年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 洞房結節 / 細胞自動能 / 活動電位 / イオンチャネル / 電気生理学 / 心臓 / 自発活動電位 / イオン電流 / パッチクランプ / 4-aminopyridine / 細胞歩調取り機能 / 電気生理学的多様性 / 細胞内イオン動態 |
研究概要 |
哺乳動物の心臓における生理的ペースメーカーである洞房結節細胞の自発活動電位の発生にはNa^+、Ca2^+やK^+電流など種々のイオン電流が関与していることが知られている。しかしながら、これらさまざまなイオン電流が結節内の部位によりどのように異なるかについては殆ど明らかにされていない。本研究では、1.ウサギ洞房結節全体を含む右心房標本、2.洞房結節主歩調取り部位を含む中心部から分界稜に近い結節辺縁部までの結節内の様々な部位を含む多細胞微小標本、3.単離洞房結節細胞の3種類の標本を用いて、洞房結節細胞のイオン電流が自発活動電位発生に果たす役割を検討した。 1.TTX感受性Na^+電流(I_<Na>) 洞房結節全体を含む右心房標本から細胞外電位を記録し、I_<Na>抑制薬TTX(20μM)を添加すると、分界稜や心房中隔部から得られる細胞外電位波形の振幅が著しく減少したが、主歩調取り部位を含む洞房結節中心部の細胞外電位波形はTTX添加前と殆ど変化しなかった。洞房結節多細胞微小標本を用いた実験では、TTX(20μM)添加により、結節辺縁部の活動電位の最大立ち上がり速度(V_<max>)が大幅に減少するとともに自発興奮が抑制されたが、TTXは結節中心部の活動電位波形に有意の変化を与えなかった。単離洞房結節細胞の膜電流解析では、結節中心部に由来する小型の歩調取り細胞からはI_<Na>が記録されなかったが、結節辺縁部の由来する大型の細胞や心房筋細胞ではI_<Na>が観察され、その電流密度は細胞の大きさが大型になるほど大きい傾向が認められた。以上の結果から、洞房結節辺縁部の細胞の自発活動電位発生にはI_<Na>が重要な役割を果たしているが、結節中心部の主歩調取り細胞にはNa^+チャネルが発現していないことが明らかになった。 2.L型Ca^<2+>電流(I_<Ca>) I_<Ca>阻害薬nifedipine(2μM)は右心房標本の洞房結節中心部の細胞外電位波形の振幅を著しく減少させ、主歩調取り部位が分界稜あるいは心房中隔部に移動した。多細胞微小標本ではnifedipine(2μM)添加により結節中心部の活動電位V_<max>と自発興奮が著明に抑制されたが、結節辺縁部の活動電位波形V_<max>は抑制されず。単離細胞実験では、I_<Ca>の電流密度には洞房結節細胞の大きさに依存する差は認めなかった。以上より、洞房結節中心部の自発活動電位の発生はI_<Ca>に依存しているが、結節辺縁部では自発活動電位の発生にI_<Ca>以外の電流の関与が大きいことが明らかになった。 3.過分極活性化電流(I_f) I_fを選択的に抑制するCs^+(2mM)は洞房結節辺縁部の拡張期脱分極(ペースメーカー電位)と自発興奮を有意に抑制したが、結節中心部へ向かうほどその効果は減衰した。Zatebradine(1μM)やZD7288(3μM)などのI_f阻害薬についても同様の結果が得られた。単離細胞では、I_fの電流密度は結節中心部の小型の細胞よりも結節辺縁部の大型の細胞の方が大きい傾向が認められた。これらより、I_fの洞房結節細胞ペースメーカー電位への寄与は結節中心部よりも辺縁部の方が大きいことが判明した。 4.4-aminopyridine(4-AP)感受性K^+電流 K^+電流阻害薬4-AP(5mM)は洞房結節細胞の活動電位オーバーシュートやプラトーを増高させるとともに活動電位持続時間(APD)を延長させた。これら4-APの効果は結節中心部よりも辺縁部の方が著しく、結節辺縁部ではAPD延長に伴って自発興奮間隔も延長した。単離細胞実験では、脱分極パルスを与えると、脱分極中に不活性化される一過性外向き電流(I_<to>)と不活性化を受けない持続性電流(I_<ss>)の2種類の4-AP感受性電流が観察された。I_<ss>の電流密度は大型の細胞で大きい傾向があったが、I_<to>の電流密度は細胞の大きさに依存しなかった。以上の結果より、自発活動電位波形の結節内部位差には4-AP感受性K^+電流も関与していることが明らかになった。
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