研究課題/領域番号 |
07044253
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
篠山 重威 京都大学, 医学研究科, 教授 (70109007)
|
研究分担者 |
KELLY Ralph ハーバード大学, 医学部, 助教授
SMITH Thomas ハーバード大学, 医学部, 教授
的場 芳樹 京都大学, 医学研究科, 助手 (70239135)
松森 昭 京都大学, 医学研究科, 講師 (70135573)
|
研究期間 (年度) |
1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
8,300千円 (直接経費: 8,300千円)
1995年度: 8,300千円 (直接経費: 8,300千円)
|
キーワード | 心肥大 / 心不全 / 心機能 / 心筋培養 / 腫瘍壊死因子 / サイトカイン |
研究概要 |
負荷心筋における代償性肥大は短期的には心機能を代償しうるが、構成蛋白質アイソザイムの変化や活性化された種々の成長因子による影響で、長期的には代償機構の破綻をもたらすと考えられている。 近年、心不全における心筋機能不全の機序として、腫瘍壊死因子(TNF-α)などのサイトカインの関与が注目されている。これらのサイトカインは心筋細胞の近傍に存在する心筋細胞以外の細胞が分泌し、パラクリン的に心筋細胞が影響を受けていると考えられる。また逆に血行動態の変化などの刺激により心筋細胞自身から活性物質が分泌され、周囲の非心筋細胞の機能に影響を与えている可能性も高い。そこで本研究では、TNF-αが陰性変力作用とともに、心不全の病態に一義的に関与するかを検討するために、心不全の悪化に深く関わる心筋細胞肥大作用を有するかを検討した。 生後12日のSDラットより得られた培養心筋細胞を48時間の無血清培地で培養後、TNF-αあるいは胎児牛血清(FCS)を投与して、24時間後の形態的変化とLowry法による総蛋白の変化、6時間後の^3H-フェニルアラニン(^3H-Phd)の取り込みの程度、24時間後に抽出したRNAを用いたノザンブロットにより、心房性ナトリウム利尿ペプチドおよびβミオシン重鎖mRNAの変化を検討した。同時に得られた非心筋細胞を2代希釈継代培養し、同様に^3H-Pheの取り込みを検討した。FCS(-)の対象群に比較してTNF-α10mg/mlで心筋細胞は肥大傾向を示し、FCS(+)に比べると卵円形を示した。総蛋白量は対照群に比較してTNF-α1、10ng/ml、およびFCS10%で1.24^*、1.18^*、および1.52^*倍であった(^*p<0.05 vs control)。^3H-Pheの取り込みは、対照群(FCS-)に比較して、TNF-α1、10ng/mlで1.92^<**>、207^<**>倍(^*p<0.005 vscontrol)であった。 心筋細胞培養系における非心筋細胞の混在は、抗ミオシン重鎖抗体による免疫蛍光法でほぼ5%以下であったが、総蛋白量への非心筋細胞の寄与を評価するために^3H-Pheの取り込みを非心筋細胞で同様の方法で検討したところ、TNF-α1、10ng/mlで対照群(FCS-)に比較して1、24^*、1.36^*倍(^*p<0.05 vs control)であった。心筋細胞のほうが非心筋細胞に比較して約3倍の取り込みの上昇がみられ、TNF-αは非心筋細胞の増殖を活性化するものの、総蛋白量の変化は主に心筋細胞での蛋白合成の増加によると考えられた。 この心筋肥大を転写レベルで検討するために、肥大の指標として現在最も再現性のある心房性ナトリウム利尿ペプチドおよび胎児型遺伝子であるβミオシン重鎖のノザンブロット解析を行い、TNF-αによるmRNAの発現の亢進を確認した。 心不全や心筋症において血中TNF-αが高値を示すことが明らかになっているが、TNF-αによる心筋細胞肥大作用は、心不全の予後に関与する因子のひとつである可能性がある。慢性心不全患者の長期予後を改善した薬剤にTNF-αなどのサイトカイン産生抑制作用があることもそれを支持する事実と思われる。心筋細胞におけるTNF受容体R55、R75(R55>R75)の発現はすでに確認されており、TNF-αがこれらの受容体を介して様々な遺伝子の発現を調整していると考えられるが、現在のところ心筋細胞においての受容体以降のシグナル伝達については不明であり、さらに研究が必要である。
|