研究分担者 |
古山 忍 (稲垣 忍) 大阪大学, 医学部, 教授 (08044282)
ROMANOVSKY A Legacy Portland病院, 体温調節研究所(アメリカ), 主任
SCHMID H. MaxーPlanck研究所(ドイツ), 研究員
GERSTBERGER アール MaxーPlanck研究所(ドイツ), 研究員
大和谷 厚 大阪大学, 医学部, 教授 (30116123)
SCHMID Herbert Max-Planck Institute, Researcher
FURUYAMA Shinobu.Inagaki Osaka University, Professor
稲垣 忍 大阪大学, 医学部, 教授 (90151571)
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研究概要 |
恒温動物の体温は発汗・血管運動・ふるえ等の自律機能,さらに行動と様々な効果器によって調節され,神経系がそれに重要な役割を果たしている.しかしこの神経機構は複雑さの故に解析が遅れ,体温調節研究の大きな壁となっている.本研究は体温調節に関わる視束前野ニューロンを形態学的,薬理学的,電気生理学的と総合的に解析し,体温調節の神経機構研究のための確実な橋頭堡を築こうとするものである.研究代表者の最近の研究で,体温調節性の皮膚血管運動に関係した視束前野のニューロンは中脳中心灰白質と腹側被蓋野に投射することが示唆された。大阪大学においては平成7年度は先ずその可能性を電気生理学的に検討した.1)ウレタン麻酔下のラットで腹側被蓋野の刺激に逆行性に応答するPOニューロンの活動を細胞外記録した.そしてそれらのニューロンの局所温度変化への反応を検討した.その結果,局所温上昇で活動の増す温感受性ニューロンは特に伝導速度が遅い傾向が見られた.逆に中脳でニューロンを記録してPO温度刺激に対する反応を解析したところ,興奮性アミノ酸注入によって皮膚血管拡張の起こる中脳中心灰白質周囲(PAG)のニューロンはPO加温で促進するものが多く,アミノ酸注入で血管収縮の起こる腹側被蓋野(VTA)にはPO加温で抑制されるニューロンが多かった.以上の結果はPOからPAG,VTAへそれぞれ促進,抑制性の信号が達していることをしめす.この結果は95年11月のアメリカ神経科学会,96年の体温と薬理学に関するシンポジウムで発表した. 一方平成8年度はふるえの神経回路についていくつかの問題点を検討した.破壊,刺激実験からふるえの調節には後視床下部(PH)が関与しており,視束前野・前視床下部(POAH)からの信号がPHで一度中継されて下位に送られるとの仮説が提唱されているが検証されてはいない.そこで先ずPHにはふるえの調節に必要なニューロンが存在するのか,あるいは他の部位からの神経線維が通過するだけなのかを検討した.寒冷に暴露したラットのPHにムシモールを投与したところふるえは抑制された.この結果はたしかにPHにはふるえに促進的に作用するニューロンが存在するものと思われる.またPHへの他の視床下部からの入力を遮断する形で脳に切断を加えたラットでもPOAHの温度刺激はふるえを変化させた.つまりPOAHからPHへは直列に信号が送られるのではなく両者は独立にふるえ調節に関与しているものと推測された.この結果は97年7月のロシアでの国際学会で発表の予定である.さらに熱産生機構については非ふるえ熱産生の視床下部内神経回路を検討した.POAHに興奮性アミノ酸を投与すると腹内側核刺激による褐色脂肪組織(BAT)の代謝増加が抑制された.この結果はPOAHを加温した効果と同じである.POAHからは主として温感受性ニューロンがBAT調節の遠心性信号を送りそれは抑制性であることを示唆する.この結果も97年にロシアで行われる国際生理学会にて発表の予定である. Schmidらドイツのグループは一酸化窒素が体温調節に関わる脊髄ニューロンの反応性を変化させることを見いだし,95年京都で行われた国際神経科学学会で発表した.またドイツのグループは脳室周囲器官の役割について主として電気生理学的な手法でsubfornical organにアンギオテンシンIIが作用しそれが一酸化窒素と拮抗的な作用を持つことを明らかにした. Romonaovskyは発熱物質の大量投与時に起こる低体温が,単に調節不全によるものではなく,生体の積極的な調節の結果であることを明らかにした.また彼末,Romonaovskyを中心として体温のset-pointに理論的検討を加えた.現在混乱を招いているこの用語は,その定義が使われる状況でまちまちなことに問題がある.そこで従来漠然と使われているset-pointの定義を明確にした共著論文を発表予定である.また同様の主旨の発表を97年コペンハーゲンで開催の体温調節に関する国際シンポジウムで行う.
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