研究課題/領域番号 |
07044262
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
倉智 嘉久 大阪大学, 医学部, 教授 (30142011)
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研究分担者 |
磯本 正二郎 大阪大学, 医学部, 助手 (80273671)
山田 充彦 大阪大学, 医学部, 助手 (10263237)
内匠 透 神戸大学, 医学部, 講師 (00222092)
堀尾 嘉幸 大阪大学, 医学部, 講師 (30181530)
DAVID Chella メイヨークリニック, 免疫学, 教授
CHELLA S Dav メイヨークリニック, 免疫学, 教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
14,800千円 (直接経費: 14,800千円)
1996年度: 7,400千円 (直接経費: 7,400千円)
1995年度: 7,400千円 (直接経費: 7,400千円)
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キーワード | カリウムチャネル / 中枢神経 / クローニング / ノックアウト / シナプス / G蛋白質 / ポリアミン / クラスター / 中枢神経系 / 分子生物学 |
研究概要 |
膜2回貫通型カリウムチャネルはスーパーファミリーを形成しており、いわゆる古典的内向き整流カリウムチャネル(IRKファミリー)、G蛋白質制御カリウムチャネル(GIRKファミリー)、ATP依存性カリウムチャネル(ROMK、K_<AB>-2)、ATP感受性カリウムチャネル(スルフォニル尿素受容体とBIRもしくはuK_<ATP>の複合体)などがある。これらのチャネルは各種臓器、細胞で発現しており、その発現分布のパターンはそれぞれのチャネルで特異的であること、また、それぞれのチャネルの性質も各サブファミリー間では比較的よく似ているが異なるサブファミリーのチャネルでは性質がかなり違っていることが近年の研究で明らかとなってきた。そこで、これら膜2回貫通型カリウムチャネルの分子機能解析を中枢神経系を中心としておこなうことを本研究の目的とした。 膜2回貫通型カリウムチャネルの全貌を明らかとするために脳cDNAライブラリーから、新たなチャネルGIRK2Bをクローン化した。GIRK2Bは既にクローン化されているGIRK2のスプライスバリアントと考えられ脳をはじめとして広くその発現がみられた。GIRK1についてもG蛋白質βγサブユニットの結合部位を欠くバリアント(GIRK1B)があることを最近見いだした。一方、ATP感受性カリウムチャネルについてチャネルサブユニットであるBIRとuK_<ATP>を脳cDNAライブラリーよりクローン化し、さらにそれに結合するスルフォニル尿素受容体SUR2Bを新たにクローン化した。SUR2Bの発現は広く分布しており、uK_<ATP>と共に培養細胞HEKに発現させたところ血管平滑筋に存在するATP感受性カリウムチャネルに非常に似た性質のチャネルを発現することがわかった。これははじめての血管平滑筋型ATP感受性カリウムチャネルのクローニングである。ゲノム遺伝子のクローニングについても既にIRK3 geneを単離していたがさらにK_<AB>-2、GIRK1 geneを単離した。IRK3についてはIRK3を不活性化した遺伝子と相同組み替えをおこしたES細胞の作成に成功した。 一方これまでにクローン化したチャネルについてはさらにそれらの発現、分布、調節機構を明らかとした。まず、古典的内向き整流カリウムチャネルのIRK1、IRK2、IRK3についてはin situ hybridizationによって脳内の詳細な分布を明らかとし、また、GIRK1については生化学的解析からG蛋白質βγサブユニットが直接チャネルに結合すること、脳ではGIRK2とヘテロ多量体を形成しているものとGIRK2を結合していないものがあること、免疫電顕による解析の結果、GIRK1はプレシナプスに存在することを明らかとした。このプレシナプスにおけるGIRK1の存在はこれまで全く考えられておらず、脳におけるG蛋白質制御カリウムチャネルの機能が単純なシナプス後抑制では無いことを示唆するものである。チャネルの電気生理学的解析ではK_GチャネルやIRK2の内向き整流特性が細胞内ポリアミンによってもたらされること、1つのK_Gチャネルの開口には複数個(おそらく4つ)のG蛋白質βγサブユニットが必要であること、ATP依存性カリウムチャネルのK_<AB>-2の分布については既にグリア細胞にその発現がみられることを明らかとしていたが、網膜のグリア細胞であるMuller細胞にクラスター状に発現していること、Muller細胞では恐らくSAP97がこのチャネルの集積に関与していること、また、HEK細胞にSAP97を共発現させるとSAP97がK_<AB>-2に結合すること、SAP97がK_<AB>-2の膜上での発現を増加させることを明らかとした。一方、内耳において、内リンパ球は約80-100mVの高電位を維持しており、この高電位は聴覚に必須である。この高電位を形成すると考えられている血管条と呼ばれる組織があるが、K_<AB>-2はこの血管条のなかのMarginal細胞のbasolateral siteに特異的に発現していること、また、K_<AB>-2の阻害薬であるバリウムによってこの内リンパの高電位が容量依存的に抑制されることから、これまでわかっていなかった内リンパ高電位形成メカニズムにK_<AB>-2が深く関与していることを明かとした。
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