研究課題/領域番号 |
07044267
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
乾 明夫 神戸大学, 医学部, 助手 (80168418)
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研究分担者 |
SAMUELSON Li ミシガン大学, 医学部, 助教授
CAMPER Sally ミシガン大学, 医学部, 助教授
SAMUELSON Linda c. University of Michigan Associate Professor
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
1995年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
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キーワード | トランスジェニックマウス / ノックアウトマウス / 行動 / 神経ペプチド / 食欲 / 情動 / neuro peptido Y. |
研究概要 |
神経ペプチドは摂食、情動、学習などの脳の機能に重要な役割を果たしていることはよく知られている。しかしながら、神経ペプチドと行動に関する従来の検討は、そのほとんどが急性もしくは亜急性の実験であり、神経ペプチドの脳内投与 (過剰モデル) や抗体による中和 (欠落モデル) 等により、主としてその病態生理学的意義が強調されてきた。 近年の分子生物学の進歩は、神経ペプチドやその受容体を過剰に発現 (トランスジェニックマウス) させたり、欠落 (ノックアウトマウス) させることが可能となり、一生涯という長い時間軸を通じて、その病態生理学的意義を解析することが可能になった。食をはじめとする行動における遺伝因子と環境因子の相互作用を解析しうる系が、誕生したといっても過言ではない。 今回の研究は、この分解のエキスパートである、Dr.Samuelson及びDr.Camperの研究室と共同で、新しいマウスモデルを作製しその行動解析を行ない、神経ペプチドの食行動や情動に及ぼす病態生理学的意義を検討した。 そのねらいは1) 脳の高次機能としての食行動の分子基盤を明らかにし、2) 肥満糖尿病をはじめとする食行動異常症の臨床病態の理解に不可欠のモデル動物を作製し、3) その病態の解析を通じ、将来の創薬や広く行動修正療法に応用してゆくことにあった。 今年度は、神経ペプチド遺伝子のクローニング、ベクターの調整、及び一部のトランスジェニックマウスの作製を行った。神経ペプチドとしては、ブリミン (blimin : 大食物質) とよばれる強力な摂食促進物質であるneuropeptide Y (NPY)、満腹物質として糖尿病、肥満もしくは過食症の原因との関連が示唆されているcholecystokinin (CCK)、pancretic polypeptide (PP)、及び強力な摂食抑制物質であり、ACTH-cortizol系を駆動するのみならず、不安やうつ等への情動行動への関与も深いcorticotropin-releasing factorCCRF) を対象とした。 1.マウス神経ペプチドゲノム及びcDNAのクローニング 1) NPY cDNAはRT-PCR法により、またゲノムはcDNAを用いたライブラリースクリーニングにより得た。 2) CCK cDNAはRT-PCR法により、またゲノムはミシガン大学スクリーニングを行った。 3) PP及びCRF PPは岡本教授 (東北大) よりcDNAを頂戴した。PP遺伝子はゲノムライブラリースクリーニングにより得た。 2.ベクターの作製 1) 中枢神経系に発現を限定するためのThy-1 (米国マウントサイナリー大学Gordon教授供与) 及び全身に強力に発現させるためのβ-actincpcAGGS、東大宮崎教授プロモーターを用いた。 2) ターゲティングベクターの作製はミシガン大学で行っている。NPYノックアウトマウスが米国で作製されつつあることから、予定を変更してPPのターゲティングベクターを作製中である。 3.トランスジェニックマウスの作製 現在のところ、NPYトランスジェニックマウス、CCK (受容体) ノックアウトマウス (ミシガン大学) の作製に成功している。 4.トランスジェニックマウスの解析 現在のところ、NPYトランスジェニックマウスの行動解析が先行しており、以下のようなパラダイムを用いて検討を用った。1.食行動、成分選択性、サッカリン、2.オープンフィールド試験、Y迷路、明暗箱、高架式十字迷路。NPYトランスジェニックマウスは不安実験の高架式十字迷路においてコントロールマウスに比べ有意なクローズアーム選択性が認められた。今後、環境因子を考慮に入れて、更に解析をすすめてゆきたい。本研究は、阪神大震災のために大きく展開が遅れることとなった。
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