研究課題/領域番号 |
07044273
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山本 尚三 徳島大学, 医学部, 教授 (50025607)
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研究分担者 |
WENDEL Birgi ベルリン自由大学, 婦人科学教室, 主任研究員
NIGAM Santos ベルリン自由大学, 婦人科学教室, 教授
KUEHN Hartmu フンボルト大学, 生化学研究所, 教授
鈴木 啓史 徳島大学, 医学部, 助手 (80253194)
上田 夏生 徳島大学, 医学部, 助教授 (20193807)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
1995年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
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キーワード | リポキシゲナーゼ / アラキドン酸 / リノール酸 / 自殺失活 / 酸素添加酵素 / 白血球 / 血小板 / 子宮 |
研究概要 |
不飽和脂肪酸のアラキドン酸を材料として、プロスタグランジンやロイコトリエンのような生理活性物質を作るシクロオキシゲナーゼと5-リポキシゲナーゼの生理的意義は明らかである。これに対して、12-リポキシゲナーゼと15-リポキシゲナーゼは、種々の断片的知見が報告されてはいるが、多くの動物種を通じて一般的知見に基づく生理的役割は確立していない。私達のグループとドイツのフンボルト大学のHartmut Kuehn教授のグループでは、それぞれ12-リポキシゲナーゼと15-リポキシゲナーゼの生化学的ならびに分子生物学的研究の多くの成果の蓄積があり、これら2つのリポキシゲナーゼに共通した性質が見出されている。さらに、ドイツのベルリン自由大学のSantosh Nigam教授のグループでは子宮頚部の12-リポキシゲナーゼの研究をしている。3つのグループの共同研究によって、生化学的分子生物学的基礎研究の上に、種々の共通点のある2つのリポキシゲナーゼの病態生理的役割を解明する事を、本研究計画の目的として、以下の成果を得た。 1) リポキシゲナーゼ遺伝子の発現調節機構 : ヒト赤白血病細胞の12-リポキシゲナーゼ遺伝子の5´上流領域には、典型的なTATAやCAATボックスは存在しないが、GATAボックス、AP2結合配列、NFκB結合配列、C/EBPβ結合配列などのコンセンサス配列が存在する。これらの領域をルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとして調べると、NFκB結合配列 (-539〜-530bp) の役割が注目された。NFκB結合配列を含むオリゴヌクレオチドを用いてゲルシフト法を行った結果、2本のバンドがシフトし、これらのバンドはさらにNFκBのサブユニットのp50、p65、c-Relの抗体によって、スーパーシフトした。フットプリント法によってNFκB結合配列はDNaseIから保護された。このようにヒトヒト赤白血病細胞において、12-リポキシゲナーゼ遺伝子の発現はNFκB (p50とp65、p50とc-Relの2つのヘテロダイマー) によって転写を負に調節されているものと思われる。 2) リポキシゲナーゼの自殺失活の機構 : 12-リポキシゲナーゼには血小板型と白血球型の2種類のアイソザイムがある。これらの酵素をアラキドン酸と反応させると、血小板型酵素は少なくとも20分間ほぼ直線状に反応が進行するが、白
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血球型酵素は反応開始後直ちに失活し始め、3-5分間でほぼ完全に失活する。しかし、このような自殺的失活の機構は未だ明らかでない。そこでリピキシゲナーゼの反応生成物でそれ自体反応性に富むヒドロペルオキシ酸 (HPETE) が、ブタ白血球12-リポキシゲナーゼと反応する際にどのようなことが起こるかを、ヒト血小板の酵素と比較しつつ検討した。白血球の酵素は反応生成物として12-HPETEの他に部分的に15-HPETEを生じ、後者は酵素がなくとも同じ酵素によってさらに14,15-エポキシ酸に変換することがわかっている。血小板の酵素のこのような活性ははるかに低い。15S-HPETEを酵素に作用させると、白血球型の酵素は2分以内で80%以上失活したが、血小板型の酵素では3分で30%しか失活しなかった。さらに [1-^<14>C] 15S-HPETEとブタ白血球12-リポキシゲナーゼを好気あるいは嫌気条件下で反応させると、いずれも放射活性が数分間で速やかに酵素蛋白にほぼ1:1の比で取込まれた。他のHPETEやHETEでは緩徐な取込みが見られた。15S-HPETEと反応させた酵素蛋白をレーザーイオン化質量分析法で測定した結果、ほぼ定量的に共有結合で15S-HPETEあるいはその誘導体が分子内に取込まれていることが推定された。このような実験結果を基にして、白血球12-リポキシゲナーゼではアラキドン酸から15-HPETEを経て生成した14,15-エポキシドが定量的に酵素蛋白に取込まれて、自殺失活をおこすものと考えられたが、14,15-エポキシド自体を使った実験を計画している。また、フンボルト大学のKuehn教授が平成8年3月中旬に来学して、15-リポキシゲナーゼでこの課題を検討することになっている。 3) ヒト子宮頚部の12-リポキシゲナーゼ : ベルリン自由大学のNigamらはヒト子宮頚部に12-リポキシゲナーゼが存在し、その活性が癌細胞で低下していることを報告している。平成7年11月に上田がベルリンを、また、平成8年2月にKumarが徳島を訪れ、それぞれ子宮頚部の12-リポキシゲナーゼの性質を生化学的実験で検討した。子宮頚部ホモジネートを遠心分画すると、酵素活性は可溶性画分とミクロソーム画分に探知された。前者の酵素は抗ヒト血小板12-リポキシゲナーゼ抗体を用いると免疫沈降し、また、同じ抗体を使ってウエスタンブロット法で12-リポキシゲナーゼと思われるバンドを認めた。さらに、基質特異性を調べると、アラキドン酸の活性に比べてリノール酸はほとんど不活性であった。このような知見を基にして、ヒト子宮頚部の12-リポキシゲナーゼは血小板型と考えられる。 隠す
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