研究課題/領域番号 |
07044276
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 高知医科大学 |
研究代表者 |
藤本 重義 高知医科大学, 医学部, 教授 (00009151)
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研究分担者 |
MARCELLINO L ローマ大学(ラ, サピエンザ)・医学部, 教授
浜里 真二 高知医科大学, 医学部, 助手 (60228533)
荒木 清典 高知医科大学, 医学部, 助手 (60151156)
高田 優 高知医科大学, 医学部, 講師 (80136374)
MARCELLINO Lucio Romano University of Rome "La Sapienza" Professor
MAFRCELLINO ルチオ ローマ大学(ラ, サピエンザ)・医学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
6,200千円 (直接経費: 6,200千円)
1996年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1995年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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キーワード | 癌特異的免疫療法 / CTL療法 |
研究概要 |
1.本国際学術共同研究費申請に至った経緯 われわれは、1970年以来、永年がんに対する免疫応答、特にT細胞応答の細胞性調節に関する解析の結果、がんが退縮するときには、がん細胞を直接特異的に認識し破壊するcytotoxic T lymphocyte(CTL)が主役であり、逆にがんが発育するときには、CTLの活性化を抑制するサプレッサーT細胞をはじめ、種々の免疫抑制機構が強く活性化することを明らかにしてきた。この実験結果を踏まえて、1986年にヒトのがん患者の末梢リンパ球に、現在担っているがんに対するCTLをin vitroで誘導活性化する方法を開発し、これを元の担がん患者の静脈内に戻すことを繰り返すことでがんの発育を抑制し、退縮させるがん特異的受動免疫療法としてのCTL療法が成立することを実証した。この成果を1987年日本癌学会総会(東京)にて発表した。この内容が当時のNHKニュースや衛星放送によって欧米にも放映され、またNHKのサイエンスQにも取り上げられた。その後新しい治療成果を次々に加え、米国でのUCLAシンポジウムや1989年ベルリンで開催された第7回国際免疫学会議、1990年ハンブルグで開催された第15回国際癌会議、1992年ブタペストで開催された第8回国際免疫学会議に新しい成果を加えつつ発表したことで数々の研究者との交流が出来るようになったと同時に、われわれの開発したがんの特異的免疫療法としてのCTL療法の理論免疫学会の専門領域でも認められ、基礎的理論の裏付けとしての詳細な解析を伴った臨床的効果が加わることで、国内外の施設から注目を浴び、共同研究の申し出が増加してきた。その中でも、1990年イタリア大使館を介して、ローマ大学医学部外科臨床腫瘍学のルチオ・ロマノ・マルチェリーノ教授からの申し出が最も現実性があり、マルチェリーノ教授自身、豊富な臨床経験から、がんに対する化学療法、放射線療法に限界を強く感じ、新しい領域として癌の生物療法、中でも免疫療法に大きな期待を持っていた。1991年マルチェリーノ教授がローマで「癌に対する生物学的、免疫学的療法」の国際シンポジウムを主催した際に、本研究代表者をシンポジストの1人として招待したことから、われわれのCTL療法を彼の教室及び関連病院において実施し、その開発を共同研究したいとの具体的な話し合いが始まった。その後、本研究
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代表者の研究室(高知医科大学免疫学教室)でローマ大学医学部の若い医学研究者を受け入れる準備を整え、1992年12月〜1993年2月まで先方の研究者を1名CTL療法開発の共同研究のため受け入れたことで共同研究が始まった。また、1993年9月にマルチェリーノ教授と研究者3名が当教室に訪れ、今後先方より若い研究者を定期的に当教室に派遣したい旨の申し入れがあった。 2.本国際学術共同研究の成果の概要 前述したように本研究代表者は、ローマ大学ラ・サピエンザ医学部外科臨床腫瘍学のマルチェリーノ教授との共同研究発足の経緯を踏まえて、1994年には2名の若い医学研究者がローマ大学よりわれわれの免疫学教室に訪れ、2〜3ヶ月滞在して主に癌患者の自己がんに対するin vitroでのCTLの誘導の条件とがん細胞の株化に関する研究を共同で進めた。1995年(平成7年度)より2年間われわれのこの国際学術共同研究に対する科学研究費が採択され、予算の裏付けも出来たことから次の実行実績を挙げた。 (1)平成7年(1995年)10月に先方のローマ大学の関連病院の一つであるVelletri市にあるClinica Madonna delle GrazieがCTL療法を行うために必要な機器、器材の充実が計られたとの連絡を受けたため、現地の視察とCTL療法の実施への指示をかねて、本学免疫学教室より研究代表者藤本重義と研究分担者である濱里真二を派遣し、実質的な討議と病院の医師を対象にし、CTL療法の理論と実際に関する講演と誘導を行った。その結果、癌患者から白血球を分離する自動分離機とリンパ球の解析のためのFlow cytometerの機器に不備があり、その設置を指摘した。また、この機会に先方の希望により第2ローマ大学(Tor Vergata)医学部外科学教室(主任カシャーニ教授)にてCTL療法に関する講演を行い、今後のCTL療法の臨床応用に関する共同研究の可能性について情報交換を行った。 (2)また本研究の代表者は、CTL療法が国内の大学機関でも普及してきたことから、1996年1月13日に全国的な研究会としてCTL療法を中心とした「癌特異的免疫療法研究会」を年1回開催するための発足会を東京で開催し、ローマ大学医学部外科より共同研究の代表分担者を含め3名の研究者を招待し、またイタリア大使館の科学技官2名の参加もあり、日本の癌免疫療法を実施している医学研究者と、CTL療法の臨床効果について情報交換を行った。なお、本研究会には、日本全国から大学機関、公立研究機関、民間研究機関より医学研究者約80名の参加があった。この研究会においては、イタリアからの参加者には同時通訳者を2名つけた。 (3)平成8年(1996年)3月4日より5月21日まで、ローマ大学医学部よりDr.Lorena Cipolloneが若い医学研究者として、本学免疫学教室にてCTL療法の開発に関する共同研究を行った。この時期の共同研究のテーマは、現在われわれががんに対するCTL療法の効果の向上に関する手技の改良についてであり、その結果、CTL誘導において末梢リンパ球と単球との割合に最適比が存在することを明らかにした。 (4)平成8年(1996年)10月24日より11月5日まで、本研究代表者は、研究分担者であるマルチェリーノ教授がローマの科学技術省の会館で主催した国際シンポジウム「がんに対する生物療法としてのCTL療法とワクチン療法のいずれが有効か」に主要シンポジストとして講演した。この国際シンポジウムの参加者には、その他米国からNIHの外科医Dr.S.Rosenberg,Dr.J.Berzofsky、ペンシルバニア大学医学部よりProf.M.Greene、その他と日本からは東京女子医大消化器病センター内科山内克巳助教授が参加した。その後この時期に関連病院の医師、研究者とその後の共同研究の進捗状況の情報交換を行い、癌細胞株化に関する問題点について討議した。 (5)平成9年(1997年)1月25日、本研究代表者は、平成7年度に発足会を開催したのに引き続き、平成8年度に第1回の「癌特異的免疫療法研究会」を東京(山之内製薬本社ホール)で開き、平成7年度を上回る約100名の参加者を見た。この研究会には再び先方のマルチェリーノ教授を招聘し、イタリア大使館から科学技官3名が参加したため、イタリア語の同時通訳を付け、日本の癌免疫療法の現状を十分に紹介した。 (6)平成9年(1997年)3月16日〜23日、研究代表者である藤本重義と研究分担者の文部教官助手濱里真二が本共同研究に関する2年間の総括としてローマ大学を訪問し、本共同研究の成果として、ヒトのがんに対するCTL療法を先方の関連病院で実施するに際しての必要な施設や機器の整備状況、治療法の手技に関する視察と情報交換を行った。この期間にローマ大学医学部皮膚科学教室のS.カルヴィエリ(Prof.Stefano Calvieri)が主催したシンポジウム"メラノーマの免疫学的側面"に招待され、癌に対するCTL療法の理論的背景と臨床成績の新しいデータを含めて講演した。 (7)今回のローマ訪問でまた新しい大学(University of Catenia)医学部の血液内科(主任教授ロザリオ・ギストリジ、Prof.Rosario Giustolisi)とのCTL療法に関する共同研究の申し出を受けた。その結果、今後われわれの免疫学的教室が中心となり、イタリア側はProf.Marcellinoを中心にイタリアの種々の大学と新しい共同研究の枠組みに関して討議し、がんの特異的免疫療法の開発に関する共同研究の体制を組んでいく方針を合意した。 本国際学術研究の総括として、上記の情報交換と先方からの若い研究者の当免疫学教室での共同研究の成果を踏まえて、本研究の目的であるがんに対するCTL療法の臨床応用に向けての共同研究の基盤が出来たと考えられる。今後、さらに共同研究を発展させる計画である。 隠す
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