研究分担者 |
リード ケネス オックスフォード大学, MRC, 教授
エゼユビッツ アラン ハーバード大学, 医学部, 教授
水落 次男 東海大学, 工学部, 教授 (90133149)
小林 邦彦 北海道大学, 医学部, 教授 (60091451)
松下 操 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (00165812)
EZEKOWITZ Alan Department of Pediatrics, Harverd Medical School
REID Kenneth b m MRC.University of Oxford
|
研究概要 |
マンノース結合蛋白(MBP)は、マンノースやN-アセチルグルコサミンに結合特異性を持つ血清レクチンである。MBPは、それ自身オプソニンとして機能し、更に補体系で活性化し、生体防御に重要な役割を演じている。MBPによる補体活性化のメカニズムは、はじめ、CIの亜成分CIrとCIsを用いて行われると報告されたが、我々は、ヒト血清MBP画分には、C4とC2分解能を有する新たなプロテアーゼ、MASP(MBPassociatecl serine protease)が存在することを見出し,MBPは、MBP-MASP複合体を形成し,補体系を活性化していることを明らかにした。このMBP-MASP複合体による補体活性化経路は、レクチンを認識分子として持ち、今まで知られている古典的経路や第二経路とは異なる新たな補体活性化経路を形成すると考え、レクチン経路と命名した。本研究では、以下の実績が得られた。 1.MBP欠損患者が高頻度(白人で5-7%)で存在することが知られており、幼児における易感染性との関連が報告されている。これらMBP欠損患者のMBP遺伝子では、塩基230の点突然変異でコドン54がGGC→GACに変化していることが明らかにされている。これは、MBP蛋白のグリシン(G)が、アスパラギン酸(D)への置換につながる変異であり,この結果、変異MBPは、合成されても生体内で速々に分解され,この結果,MBPの欠損となると考えられている。米国、ハーバード大学のエゼコビッツ博士は、正常タイプのMBP(MBP_G)と変異MBP(MBP_D)のリコンビナントを作製し、両MBPの性状を比較検討した。その結果、MBP_Gが、ヒト血清中の補体活性化能を示したのに対して、MBP_Dには、その活性が損われていた。そこでこのような性性の違いの原因を解明する目的で、MBPとMASPとの反応性に着目して検討を行った。その結果、MBP_Gは、ヒト血清中のMBPと同様にMASPの共存下、補体成分C4,C2分解を伴う補体活性化能を示したが、MBP_Dにはその活性は見られなかった。更に、MBPとMASPとの結合性を検討したところ、MBP_GはMASPと結合したのに対してMBP_Dは結合しなかった。以上の結果より、MBP_Dに補体活性化能が損われている原因として、MASPとの結合性がないことが明らかになった。また、MASPのMBPへの結合には、コドン54近傍の構造が重要であると推定された(Biochem.J.1995)。 2.生体内においてMBPは、MASPと複合体を形成しているが、invitroにおいては、CIr/CIsと結合することが知られている。そこで、MBP-MASP,CIの亜成分間の結合性を、蛋白成分間の結合状態を調べる装置であるBiacoreを用いて測定した。即ち、英国、オックスフォード大学のリ-ド博士の調製したCIと我々が調製したMBP,MASPを材料として、MBP-MASP,MBP-CIr/CIs,CIq-MASP,CIq-CIr/CIs各々の結合実数を求めたところ,これらすべてが一定の定数で結合することが判明した。血清中では、MBP-MASPとCIq-CIr/CIsのみ存在することを考慮すると、これらの複合体の形成には、他の血清成分による制御を受けている可能性を示唆している。 3.新たなプロテアーゼ、MASPは、肝臓で産生されているが、その血中濃度については不明である。そこで、我々は、MASPに対するモノクロナル抗体を作製し、サンドウィッチELISAの系を確立し、MASPの定量を行った。その結果、正常人では約6ug/mlであることが判明し,現在、種々の疾患で測定中であるが,正常人では,血中のMBP値との間に相関はなく、MASP値は、MBPとは別に制御されていると考えられた。また、MASPは血中でMBPと結合体を形成しているが、フリーの形でも存在することが判明した。更に、MBPは生後5日後にその血中濃度が2-3倍になるのに比較して、生後一定のレベルで経過することが判明した。
|