研究課題/領域番号 |
07044288
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
野中 勝 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (40115259)
|
研究分担者 |
尾崎 康彦 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (50254280)
CAMPBELL R.D オックスフォード大学, MRC, Special Ap
FLAJNIK Mart マイアミ大学, 医学部, 教授
CAMPBELL R. オックスフォード大学, MRC, Special Ap
FLAJNIK Mar マイアミ大学, 医学部, 教授
CAMPBELL Duc オックスフォード大学, MRC, Special Ap
|
研究期間 (年度) |
1995 – 1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
6,700千円 (直接経費: 6,700千円)
1996年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1995年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
|
キーワード | MHC / 補体 / 下等脊椎動物 / 進化 / 連鎖 / プロテアソーム |
研究概要 |
下等脊椎動物におけるMHCの構造を両生類アフリカツメガエル、硬骨魚類メダカを用いて解析した。先ずこれまでにMHC様遺伝子複合体の存在が明らかにされていた両生類アフリカツメガエルにおいてMHCの構造をより詳細に検討する目的で、クラスIa、クラスIIb、補体Bf、C4、HSP70、LMP7遺伝子間の連鎖解析を行った。その結果、MHC内で組み換えを起こしたカエルを2匹認めることにより、これらの遺伝子は3群、クラスIIbとLMP7、クラスIaとC4、BfとC4に分けられ、このうちクラスIa、C4が中央に位置する事が判明した。この遺伝子配置は哺乳類のMHCとは著しく異なっており、MHCは脊椎動物の進化の過程で、主要な遺伝子の連鎖は保ったまま大規模な再編を経験したことが示唆された。特にツメガエルの遺伝子配置ではクラスIaと、その上に提示される抗原のプロセシングに働くLMP7の遺伝子が互いに近接して存在することが示唆され、これがMHCの原型に近いものと考えられた。LMP2遺伝子のクローニング、連鎖解析も行ったが、この遺伝子はアフリカツメガエルではMHCと連鎖していなかった。しかし、近縁種トロピカリスではLMP2はMHCと連鎖しており、アフリカツメガエルでは4倍体化に際して連鎖が崩れた可能性が示唆された。LMP2、LMP7の発現の組織特異性を調べたところ、両者は平行して発現しており、この調節に遺伝子の連鎖は必要でないことが判明した。また、数系統のカエルの解析により、特定のLMP7とクラスIaの組み合わせが抗原提示に必要である可能性が示唆された。この可能性を検討するためのMHC内の組み替え体の作成を目的とした掛け合わせは戻し交配の子孫からDNAを抽出する段階まで進行し、現在タイピングを行っている。組み替え体が発見できれば、約一年後にはそのMHCをホモに持つカエルが得られ、自然界に存在しない組み合わせで抗原提示が行われるかどうかが判明する予定である。 一方、硬骨魚類のメダカからは、クラスIIb、Bf/C2、LMP2、LMP7の遺伝子の単離、連鎖解析を行った。補体Bf/C2遺伝子は哺乳類Bf、C2とほぼ同程度の類似性を示し、どちらであるかは決定できなかった。これはツメガエルの遺伝子が明確にBfと同定されたのと対照的で、古典経路、第二経路の成分間の遺伝子重複が、硬骨魚の段階では生じていなかったことが示唆された。この結果はこれまでに行われてきた機能的な解析の結果と矛盾しており、今後タンパク質レベルでの解析により解決されるべき課題として残された。連鎖解析の結果、クラスIIb遺伝子は3コピーが、二つの遺伝子座に分かれて存在すること、Bf/C2遺伝子はそのどちらとも連鎖していないこと、及びLMP2、LMP7遺伝子は互いに連鎖しているが、クラスIIb、Bf/C2遺伝子とは連鎖していないことが明らかになった。従って今の所、メダカにはMHCと呼びうる遺伝子複合体が存在するかどうかは明らかでなく、今後その点をクラスIa、TAPの遺伝子を解析することにより、明らかにして行きたい。 軟骨魚類については、解析を始める第一段階として、ドチザメの肝臓cDNAを作成し、C3、Bf用のPCRプライマーを用いた増幅を行い、それぞれ対応するDNA断片を得た。現在cDNAライブラリーを作成して全長cDNAを単離することを計画中であり、構造解析、連鎖解析と進める予定である。 以上の結果より、硬骨魚類の段階ではMHC構成遺伝子は既に大部分が出現していたにもかかわらず、哺乳類のような遺伝子複合体は形成していなかったこと、及びこの遺伝子複合体構造は両生類が出現するまでの間にほぼ完成した事が示唆された。ただし、両生類における遺伝子配置は哺乳類のものと著しく異なっており、これらの遺伝子間の連鎖は染色体の再編が行われたにも関わらず保たれてきたことが明らかになった。
|