研究課題/領域番号 |
07044290
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
平山 謙二 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60189868)
|
研究分担者 |
張 紹基 江西省寄生虫病研究所, 教授
袁 鴻昌 上海医科大学, 教授
YUAN Hong-chang Shanghai Medical University, Professor
ZHANG Shaoji Parasitic Diseases Nanchang, Professor
|
研究期間 (年度) |
1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1995年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
|
キーワード | 日本住血吸虫症 / 中国 / 肝繊維化 / 肝硬変 / 超音波診断 / HLA / DNAタイピング / 免疫遺伝学 |
研究概要 |
研究の目的 日本住血吸虫症は、中国、フィリピンを中心にその侵淫地が拡がっており、主に慢性期に肝疾患を発症することにより現在でも高い死亡率をあげ、地域の経済を圧迫し続けている。住血吸虫性肝硬変は、住血吸虫感染後の最も重篤な合併症である。 この発症には、門脈に寄生した成虫の産出する多数の虫卵の門脈域への沈着と、これに対する過剰なT細胞性免疫応答性が関与するとされている。現在、中国揚子江流域の江西省だけでも年間約30万人の患者が発生し、30代以上の感染経験者では、地域によってはその約半数に肝線維症が認められている。本研究では、住血吸虫症による肝線維化発症における免疫応答性の役割について検討するために、特に、T細胞性免疫応答性に遺伝的に調節していることが強く示唆されているHLA-クラスII分子の病態との間の関連を調べ、慢性の住血吸虫症の病態が遺伝的に規定されているか否かについて検討することを目的とした。 2.方法 上海医科大学の袁教授、江西省寄生虫病研究所の張教授と対象地の選定および方法について協議し、以下のような手順で共同研究を進めた。中国江西省玉山県の四股橋村、人口約800人を対象地区として過去に住血吸虫症の既往歴あるいは、治療歴のある患者をランダムに選択し、現地の医師と協力して検診を行ない、肝脾の超音波検査を施行し各人の住血吸虫症に特有な肝脾部の異常を調べた。さらに患者の末梢血を採取し、これより染色体DNAを抽出し、HLA-クラスII遺伝子座のアレルタイピングを行ない特有の臨床像あるいは重症度とHLAとの相関の有無について検討した。 3.結果 対象者はまず問診にて病歴の有無を確認し、感染の回数及び感染重症度と無関係に、過去10年以前から虫卵検査陽性または治療歴を有するものの中からランダムに244名を選択した。うち男性136名、女性108名で平均年齢は51.9才であった。 超音波検査は、対象者すべてに行ない、WHOの診断基準に基づいて検討した。すなわち、肝繊維化の度合の評価は、グレード0がまったく変化を認めないのに対し、グレード1では、巣状の輝度亢進が肝実質にびまん性に見られるが明らかな住血吸虫症特有の像はまだ見られないものであり、グレード2ではいわゆる魚のうろこ状の典型的な肝実質パターンを呈する。グレード3ではグレード2よりさらに大きな輝度亢進を示し、巣状の輝度亢進部の直径が20mmをこえる。この基準に基づいて診断した結果、対象集団中には、グレード0が76名(31.1%)、グレード1が70名(28.7%)、グレード2が91名(37.3%)そしてグレード3が7名(2.9%)認められた。以上のように、各グレードのサンプル数がHLA-DRBあるいは、DQBの多型との相関の解析に必要十分な大きさであるとの判断し、HLA-DNAタイピングを施行した。 HLA-DRB1およびDQB1座のアレルタイピングは第11回HLA国際ワークショップ会議の方法に従い、PCRによる特異的な遺伝子断片の増幅とこれをメンブレンに固定後のSSO_S(sequence specifi coligonucle otide probes)との反応性により判定した。その結果、HLA-DRB1座では 28のアレルが集団中に存在することが、HLA-DQB1座では15のアレルが集団中に存在することが判明した。そこで各肝繊維化の程度による頻度の傾りをカイ2乗法により検定したところHLA-DQB1アレルでは各群でいずれも有意差を認めなかったのに対し、HLA-DRB1では、DRB1*1101がグレード0の肝繊維化抵抗群で、他の線維化群より有意に増加していることが明らかとなった。(x^2=11.73,補正後のp値0.002以下)。 4.考察 以上の結果から、感染後ほぼ同様の虫卵による暴露を受けながらもまったく肝繊維化の認められない群にHLA-DRB1*1101が有意に増加していたことから、このアレルを持つ固体が住血吸虫性肝硬変に抵抗性を有することが強く示唆された。今後さらにこのアレルを含むハプロタイプについて詳細に検討し、抵抗性との関係を免疫学的に解析してゆく予定である。
|