研究概要 |
平成7年度の研究計画にもとづいて,γδT細胞欠損ミュータント(δ-1-)マウスや特定のγδ-TCRトランスジェニック(γδ・Tg)マウスの無菌化を達成し,腸管粘膜を免疫組織化学的手法で追求するべく遂行したが,無菌マウス作製の遅れのため結果が得られていない.しかしながら以下の実績を得ることが出来た. 1)マウス腸管の最前線に分布する腸管上皮細胞間T細胞(intestinal intraepithelial T lymphocyte ; IEL)はαβ型TCRを保持するαβ-IELとγδ型TCRを保持するγδ-IEL約半数ずつで構成されるが,その機能は不明である.TCR欠損マウスの小腸切片を検索した結果,γδ-IEL欠損マウスの陰窩(crypt)細胞数は有意に減少することが判明した.αβ-IEL欠損マウスのcrypt細胞数は正常WTマウスのそれに匹敵し,γδ-IEL欠損マウスにγδ-IELをadaptiveに再構築するとcrypt細胞数が回復することが確かめられた.小腸上皮細胞(intestinal epithelial cells;IEC)はcryptで盛んに分裂し,発達分化を遂げながら絨毛先端へと移動して死滅する.IECのターンオーバーは速く,この間に要する時間は2〜3日にすぎない.BrdUを投与して分裂再生IEC数を算定した結果,γδ-IEL欠損マウスではIEC再生が有意に低下していた.絨毛上皮は恒常的にMHCクラスII分子を発現することが知られている.抗IA^bmAbでC57BL/6マウス(positive control),αβ-IEL欠損マウス,γδ-IEL欠損マウスの腸管絨毛を染色した結果,γδ-IEL欠損マウスのIBCではIA^b発現が著しく減弱することが分かった. 前年度からの研究続行によってαδ-IELがIECのホメオスターシスを正の方向に統御することを初めて明らかにすることが出来た.この新知見はγδT細胞の生体内生理的機能解明に向けて極めて重要と考えられ,これらを最終的にまとめて発表した(Proc.Natl.Sci.USA 92:6147-6151,1995). 2)マウスγδ-IELの大多数はCD8αα^+であり,αβ-IELも大多数がCD8αβ^+かCD8αα^+である.胸腺由来CD8^+T細胞の発達文化にはMHCクラスI抗原が必須であることが分かっ
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ているので,IELの発達分化をMHCクラスI抗原発現阻止マウスで追求した.β_2M遺伝子,TAP-1遺伝子及びβ_2MとTAP-1(β_2TA)両遺伝子を欠損するミュータントマウス(KOマウス)では,MHCクラスI分子の発現が阻止される.これらのKOマウスではCD8αβ^+及びCD8αα^+αβ-IELが著しく減少するのに反し,CD8αα^+γδ-IELは増加することを確認した.αβ-IEL中のCD4^+8^+及びCD4^+サブセットは粘膜固有層中のLPLである可能性が提示されていたが,TAP-1・KOマウスで著明(5〜6倍)に増加しており,これらのサブセットはLPLではなくIELであることが強く示唆された.β_2TA・KOマウスのIELはβ_2M・KOマウスと同じphenotypeを示した.これらのMHCクラスI発現阻止マウスにおけるCD8αβ^+αβ-IELの消失をβ_2M×δダブルKOマウスで追求した結果γδ-IEL不存在下ではαβ-IELの総数が増加し,CD8αα^+αβ-IELサブセットも増大することが分かった.しかしながらCD8αβ^+αβ-IELサブセットは検出限界以下であった.これらの結果より,CD8αα^+IELサブセットはαβ-IEL及びγδ-IELとともにMHCクラスI分子依存性に発達分化することが明らかにされた.この新知見はIELの大多数を占めるCD8αα^+サブセットの発達分化機構,レパートリー選択,生体内リガンド解明に向けて重要であり,発表することになった(J.Immunol.印刷中,1996). 3)マウス表皮内T細胞はDETCと呼ばれる均一なγδT細胞で構成されている.平成7年度は表皮親和性を示す自己反応性T細胞クローンを投与することで表皮内GvHRを引起こすことが可能であるとともにGvHRが自然治癒した後は,新たなGvHR誘導に対して抵抗性となる事実に着目し,この抵抗性獲得にDETC(γδT細胞)が関与するか否かを,γδT細胞欠損ミュータントマウスを用いて追求した.この結果GvHRに対する抵抗性獲得にはDETC(γδT細胞)が必須であることを確認した.すなわちDETCの生体内機能が表皮GvHRに対する抵抗性獲得に関与するという事象で検出された新知見は,γδ-IELが腸管上皮細胞のホメオスターシスを統御する事実とともにγδT細胞の生理的機能解明に向けて極めて重要と考えられる.以下をまとめて発表することになった(J.Exp.Med.印刷中,1996) 隠す
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