研究課題/領域番号 |
07044297
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
池中 一裕 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (00144527)
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研究分担者 |
PFEIFFER ste University of Connecticut Medical School, Professor
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1995年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | ミエリンプロテオリピド蛋白質(PLP) / オリゴデンドロサイト / DM-20 / 分化液性因子 / イノシトール六リン酸 / 細胞内小胞輸送 |
研究概要 |
ミエリンプロテオリピド蛋白質(PLP)及びPLP遺伝子のオルタナティブスプライス産物であるDM-20は、中枢ミエリン形成細胞であるオリゴデンドロサイトに特異的に発現し、ミエリンの構造蛋白質として知られている。また、PLP遺伝子に突然変異を持つ動物では運動失調になると共に、ミエリン形成期以前にオリゴデンドロサイトが幼弱なまま変性脱落することが知られている。しかしながら、なぜPLP遺伝子の多くの突然変異がオリゴデンドロサイトの生存維持にまで影響するのか今のところ解明されていない。我々はこれまでに、PLP遺伝子産物のDM-20がオリゴデンドロサイトの分化時期に相当する胎生期に微量発現すること、また神経系由来の非常に多種の培養細胞でDM-20 mRNAが産生され、その倍養上清中にオリゴデンドロサイト数を増加させる活性があることを明らかにした。これらのことからグリア細胞分化時にPLP遺伝子がアストロサイトなどオリゴデンドロサイト以外の細胞にも発現し、オリゴデンドロサイトの生存維持または分化促進に機能していることを示唆してきた。本研究では以上の結果を踏まえた解析により、液性因子としてPLP/DM-20自身がオリゴデンドロサイトの分化促進作用を持つことを明らかにし、さらにPLPの新しい機能として、PLPがイノシトール六リン酸(IP6)結合活性を持つことを明らかにした。 1.胎生期のPLP遺伝子発現の機能を解明するためにPLPおよびDM-20 cDNAを培養上清中に活性を持たないNIH3T3細胞に強制発現させた。PLPやDM-20強制発現細胞の培養上清をオリゴデンドロサイトの前駆細胞が多く存在するマウス初代培養系に添加したところ、オリゴデンドロサイトのマーカーであるGalC陽性細胞{GalCを特異的に認識するモノクローナル抗体O1(Pfeiffer教授供与)により検出}の増加を示した。また、Pfeiffer教授のラットのオリゴデンドロサイト純粋培養系においても同様の効果が見られ た。 この活性は抗PLP抗体(AA3抗体:PLPのC末端を認識する)によって中和されたので、PLP分子自身もしくはPLP修飾産物が直接オリゴデンドロサイトの増加促進活性を担っていることが考えられた。そこで精製PLPを培養系に添加したところ、10pg/mlという大変低い濃度でオリゴデンドロサイト数の増加活性を示した。また、精製DM-20やクロロホルム/メタノールによって抽出したPLPとDM-20の混在するサンプルを培養系に添加した時も同様な活性を示した。これらの結果から、液性因子としてPLP/DM-20自身がオリゴデンドロサイトの分化促進作用を持つことが明かとなった。 2.最近、マウス脳より有機溶媒ではなく界面活性剤(トリトンX-100)を用いて精製したPLPが高い親和性でIP6と結合することを明らかにした。報告されている他のIP6結合タンパク質(AP2やAP3、コートマー、シナプトタグミンなど)が細胞内小胞の輸送に関与していることから、PLP自身がオリゴデンドロサイトにおける細胞内小胞の輸送に関与していることが示唆された。また部分精製したDM-20はIP6結合活性をしめさなかった。現在、進化論学上、DM-20の祖先である分子がPLP特異的ドメインを獲得することにより、高等な四肢動物において中枢ミエリンの構成蛋白質になったと考えられている。このことからDM-20がIP6結合ドメインとしてPLP特異的ドメインを獲得し中枢ミエリンに限定して輸送されるようになったと示唆された。Pfeiffer教授は最近オリゴデンドロサイト純粋培養系を用いて、オリゴデンドロサイトにおける細胞内小胞の輸送機構に関して解析を行っている。現在、他にどのような膜輸送タンパク質がPLPを含む小胞の輸送に関与しているのか明らかにする目的で、Pfeiffer教授の協力のもと、抗PLP抗体を用いたPLPを含む小胞の精製を試みている。 研究計画のうち、温度感受的に発現するSV40のラージT抗原を導入したトランスジェニックマウスからオリゴデンドロサイト前駆細胞を純粋培養し不死化細胞株を確立する事に関しては、現在アストロサイト前駆細胞に関して、系を確立中であり、オリゴデンドロサイトに関してはまだ行っていない。
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