研究分担者 |
FOSKETT J.Ke トロント大学, 医学部(平成7年度のみ分担), 助教授
RIVA Alessan カリアリ大学, 医学部, 教授
STEWARD Mart マンチェスター大学, 生理科学部(平成8年度のみ分担), 助教授
SOLTOFF Step ハーバード大学, 医学部(平成8年度のみ分担), 助教授
TURNER R.Jam アメリカ国立衛生院, 主幹
DISSING Stee コペンハーゲン大学, 医学部, 助教授
YOUNG John A シドニー大学, 医学部, 教授
瀬川 彰久 北里大学, 医学部, 講師 (50154638)
石川 透 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (70249960)
瀬尾 芳輝 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (90179317)
杉谷 博士 日本大学, 松戸歯学部, 助教授 (20050114)
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研究概要 |
外分泌腺細胞は、水電解質輸送を遂行するため、細胞膜にチャネル、共輸送体、対向輸送体、Na/K ATPaseなどの輸送体が存在しイオンを一方向に輸送し分泌を起こすと考えられている。本研究の目的は、これらの輸送体がどのように協調しシステムとして巨視的な分泌を形成するか(協奏機構)の検討にある。協奏機構解明のため実験対象を大量の分泌をおこす唾液腺輸送体の制御機構に限定、最先端の測定手技を有する共同研究者の各実験サイトで、共通の実験試料を対象に水および複数のイオン種の動きを観察する。協奏機構モデルに測定値を適用し、最適化実験を繰り返し外分泌における輸送体の協奏機構について検討した。 1995年はサブテーマi)試料調整の共通化,ii)細胞内メッセンジャー,iii)DlチャネルとKチャネル,iv)Na/H,Cl/重炭酸対向輸送体,v)Na/K/2Cl共輸送体,vi)Na/K ATPaseとエネルギー供給)について実施。1)生理研では、灌流臓器、遊離細胞を用い、a)水分泌速度と酸素消費測定を行い、各輸送体のエネルギー要求を解析。b)多核種NMRによる細胞内Na,K,Cl,アンモニウムの輸送量測定。c)電解質輸送量とチャネル活性の相関を解析。2)唾液腺細胞単離標本の分泌経過に伴うcyclic AMP,Caの濃度変化を定量(日本大学松戸歯)、細胞内情報達系とNa/K/2Cl輸送体活性の対応を分析した(NIH)。3)羊口腔腺の灌流標本を世界で初めて作製、羊口腔腺細胞の輸送体の電気特性測定実験(シドニー大学)と重ね合わせ解析を始めた。4)顕微分光法にて細胞内Caの動態を,HPLC法にてイノシトール燐化合物の動態と輸送体燐酸化の関係を解析(コペンハーゲン大学)。5)放射性同位体法によりNa,K,Clの輸送動態を解析、Na/K/2Cl共輸送体の制御を解析(NIH)。6)水分分泌及び開口分泌に伴う細胞間隙構造の変化をレーザー顕微鏡及びSEMにて観測、水分泌経路の制御様式を検討(北里大学・カリアリ大学)。7)11月研究打ち合わせ、輸送体の局在と細胞内制御機構の位置的関係、水及びイオンの輸送経路のサイズとその制御について討論。 1996年、1)生理研では、新たに耳下腺の灌流実験系を開発、a)水分泌速度と酸素消費測定、Na,K輸送量測定により各輸送体のエネルギー要求を解析。Stewardと共同で容積増大時のK輸送測定(生理研・マンチェスター大)b)京都府立医科大学においてもNMR装置を立ち上げ、重水素NMR法・マイクロイメージングを導入、上皮膜水輸送への応用を検討。c)電解質輸送量とチャネル活性の相関を解析(トロント大学)。2)北里大学・カリアリ大学では、水分分泌及び開口分泌に伴う細胞間隙構造の変化をレーザー顕微鏡及びSEMにて観測、isotroterenol刺激とcholinergic刺激においてmicrofilamentによる制御様式の違いを発見。3)purin受容体活性化による水輸送の抑制を観察(ハーバード大・生理研)。HPLC法にてイノシトール燐化合物の動態と輸送体燐酸化の関係を解析、purin受容体活性化によるIP3放出ブロックを発見(コペンハーゲン大)。4)cyclicAPMによる開口分泌に関与する顆粒膜側タンパクとして新たにVAMP-2を同定、VAMP-2の標的タンパクの候補としてsyntaxin4,SNAP-23の役割を分子生物学的手法で解析(日大松戸歯)。5)シドニー大学において羊口腔腺の灌流実験を継続、マウス顎下腺導管のNaチャネル活性制御機構としてG蛋白の役割を解析。6)アンモニウムパルス法によりNa/K/2Cl共輸送体制御を解析、新しい共輸送体の働きとして陰イオンの排出機能を提案(NIH)。7)10-11月岡崎にて研究打ち合わせ(Steward,Seo,Young,Cook,Dinudom,Turner,Soltoff,Dissing)、輸送体の新しい機能とプリン受容体活性化による細胞内情報伝達の制御、単一細胞と組織構築を持った細胞の容積増大の違い、開口分泌の分子機序、などについて討論した。 本共同研究は、事前の共同研究の基礎の上に実施されたために、有意義な成果をあげることができた。特に、臓器灌流法、遊離細胞灌流法、分子生物学の唾液腺への適用について、同じ手法で得られた試料から検証したので、各方法について基礎的な成果と研究者間の合意ができてきた。一方、最終目的である協奏機構モデルへのデータ適用、解析のスケジュールがやや遅れている。本研究により、水電解質分泌研究分野の問題点の理解が大きく進展し、現時点での国際的な共通理解を得、いくつかの共同研究をスタートした。
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