研究課題/領域番号 |
07044307
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
北川 隆司 広島大学, 理学部, 助教授 (70112167)
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研究分担者 |
黄 辰淵 釜山大学, 地質学科, 副教授
鈴木 盛久 広島大学, 学校教育学部, 教授 (10033888)
HWNAG Jin-yeon Pusan National University, College of Science, Associate Professor
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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キーワード | 花崗岩 / 風化作用 / 熱水作用 / 粘土細脈 / K-Ar年代 / スメクタイト / カオリナイト / 雲母粘土鉱物 |
研究概要 |
1.目的 本研究は主として韓国の花崗岩を対象として次の目的をもっている。 *花崗岩の風化現象が地域により異なっており、それがどのような原因でおこりるのか。*風化作用により生成した粘土鉱物は地域によりことなるのか。*我が国と同じようにいわゆるマサ化は認められるか。*我が国と同じように粘土細脈は認められるか。*花崗岩の変質に熱水作用は関与しているか。*粘土細脈中にはどのような粘土鉱物が生成しているか。*その粘土鉱物の鉱物学的特徴は。*その形成機構の解明*粘土細脈中の粘土鉱物の形成時代 (K-Ar放射年代測定)。*総合的に我が国の花崗岩の風化変質機構と比較することにより、花崗岩の風化機構を解明する。 2.韓国の調査地とその風化状態 今回調査した地域は3ヶ所 (釜山、慶州、ソウル) で、その内1ヶ所 (慶州) は詳細な調査と試料採取を行った。釜山 : 釜山地域の基盤は主として白亜紀花崗岩 (仏国寺花崗岩) で、釜山市周辺の山はこの花崗岩である。この花崗岩の風化状態は地表付近ではコアストーンが多く、表土もほとんど認められず非常に硬岩となっている。いわゆるマサ化した花崗岩はほとんど認められない。コアストーンも我が国の花崗岩中のものより2-3倍大きい傾向にある。山の斜面には我が国と比較して谷が少なく、全体にのっぺりした感じである。その浅い谷筋には崩壊して堆積しているコアストーン多くが認められる。それらの下の岩盤は非常に硬く割れ目が少なく、その間隔は非常に広い。慶州 : 今回主として調査した地域である。この地域には古第三紀火山岩中に数Kmの花崗岩の小岩体が点在しており、韓国側共同研究者である黄博士らによる研究で、39.7Ma-59。5Maの放射年代測定値が得られ、古第三紀の花崗岩であることが明らかになった。今回調査した岩体はその中で最も若い年代を示す岩体で、我が国の山陰地方に分布する山陰型の花崗岩に対比される。この岩体には岩体のほぼ真ん中を切るように道路が付けられており、連続した露頭観察が可能であった。それによると、火山岩との境界はいずれも広角度の断層により境されている。その断層には粘土鉱物が生成しており、一部には黄鉄鉱、方鉛鉱が脈状に形成され、境界部付近は著しい熱水変質作用を受けている。さらにこの岩体は部分的に著しい変質作用を受け、いわゆるマサ化している。このような場所には必ず粘土細脈が
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多く認められる。この様子は我が国の花崗岩のマサ化した地域には多く認められる粘土細脈の存在と非常に類似している。ソウル : ソウル地域はジュラ紀の花崗岩の分布する地域で、非常に新鮮な花崗岩が分布している。この地域もいわゆるマサ化した花崗岩はほとんど認められない。山岳部の斜面にはコアストーンが多く顔を出しており、全体としてはほとんど風化した花崗岩は認められない。しかし、谷ぞいに一部やや風化した花崗岩が認められるが、いわゆるマサ化まで風化は進んでいない。主とした調査はソウル大学の敷地内の工事現場の露頭で行った。その谷地形の露頭は新鮮な花崗岩が分布しているが、谷ぞいに断層が認められ、その断層と周辺に粘土細脈が多く認められた。その結果この谷ぞいの花崗岩はやや風化の進行が認められた。 3.花崗岩の風化変質鉱物と粘土細脈中の粘土鉱物 変質した花崗岩と粘土細脈を水簸し、粘土鉱物を集め、X線回折により粘土鉱物を鑑定した。 釜山 : 花崗岩中に形成している粘土鉱物は主としてハロイサイトである。粘土細脈中の粘土鉱物はスメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母粘土鉱物、雲母・スメクタイト混合層鉱物で、特にスメクタイト、雲母粘土鉱物、雲母・スメクタイト混合層鉱物である。慶州 : 花崗岩中に形成されている粘土鉱物は雲母粘土鉱物、スメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、緑泥石、雲母・スメクタイト混合層鉱物であった。そのうち特にスメクタイトが顕著に認められた。また、粘土細脈中の粘土鉱物も花崗岩と同じであるが、雲母粘土鉱物、スメクタイト、雲母・スメクタイト混合層鉱物が特に卓越している。ソウル : 花崗岩に形成されている粘土鉱物は主としてハロイサイトである。一部スメクタイト、雲母粘土鉱物、雲母・スメクタイト混合層鉱物である。粘土細脈中の粘土鉱物は主として、スメクタイト、カオリナイトであった。 4.粘土鉱物のK-Ar放射年代測定値 ソウル調査地で花崗岩とそこに見られる粘土細脈中の粘土鉱物のK-Ar年代測定を実施した。測定試料は花崗岩1、粘土細脈3試料である。その結果花崗岩は143.7Ma、一方粘土細脈は104.3Ma、107.2Ma、73.2Maであった。この年代値からみると花崗岩はちょうど白亜紀とジュラ紀の境界付近で、粘土鉱物は後期白亜紀に相当している。この値は粘土細脈を形成した熱水作用が花崗岩を形成した後かなり長く活動していたことを示すものか、あるいはジュラ紀花崗岩の下に白亜紀花崗岩が存在するのか現時点では明確でない。 結果の概要 韓国はユーラシア大陸の一部であり、いわゆる大陸型の花崗岩地域である。しかし我が国はプレートの沈み込み帯に位置している。このことが両国の花崗岩の風化変質状態 (割れ目が少ない粘土鉱物の違い) の違いを反映している可能性がある。 隠す
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