研究概要 |
1.Flyinglmage法の特性解析 Flyinglmage法では,鏡を回転させて撮像素子への走査を行っているため,画像の上下に行くに従ってセンサと結像面との距離がずれ,得られる画像は全体にたる形にひずむ.このひずみを正確に補正することが,本計測装置を利用する上で必要である.本研究ではひずみの補正方法として,平行線を撮影して得られた線像が平行になるように画素を移動する方法を考案した.得られた画像の画素(移動元)が本来ならどの位置(移動先)にあるべきかを計算して画素の移動を行うと,移動先の画素が全て連続したものにならないときがある.これを避けるために,移動先の画素位置に対応する移動元の画素を移動してくる方法を用いた. 2.計測装置の製作 撮像素子には2048画素のラインCCDセンサを使用した.ラインCCDセンサは,一軸当たりの画素密度がエリアCCDセンサに比べて高いうえに,安価で普及している.このため,高解像度の画像を得ることができる.撮影可能な画像の解像度は,センサに平行な方向に2048画素,垂直な方向に1024画素である.レンズは通常のカメラレンズを使用している.レンズの光軸とセンサは垂直な関係にあり,レンズの光軸とセンサの光軸の交点を通り,センサに平行な軸に鏡の回転軸がある.この軸はステッピングモータの回転軸と直結されており,モータの回転制御はコンピュータで行う. 3.スリット光投影方式による計測システムの設計 計測装置全体は,レーザダイオードが計測物体を鉛直上方から照射するようにLアングルによって組み上げられ,カメラもアングルに設置されている.計測物体は,リニアステージ上に置かれるが,アングルと連結はされていない. 4.三次元計測実験 本計測装置の精度を評価する方法として,スリット光投影法による計測を2種類行った. 1種類目は,寸法が既知である直方体の標準物体にレーザダイオードからスリット光を照射し,その輝線のジャンプエッジを検出することにより座標を算出する方法を用いた.物体までの距離は300mm,使用したレンズは35mmである.この手法では,1回の撮影で2つの座標を算出することができる.キャリブレ-シヨンは画面の上部,中部,下部の合計6組12点で行った.こうして求めたカメラパラメータから,対象物体のジャンプエッジを求め,そこから物体の長さを算出して真値との差を誤差とした.計測は物体をセンサに平行な方向に9回,上下方向に4回動かして各3回ずつ行い,その誤差の平均値を採用した.その結果,誤差の標準偏差は0.323mmであった.補正の効果を確認するために,撮影した全ての画像に対して補正を行った後に,同じアルゴリズムによって計測を行った時の誤差の標準偏差は0.270mmとなり,0.054mmの誤差の低減がなされていることが確認できた. 2種類目は,標準物体の辺が上を向くよう斜めに傾けて設置して,スリット光を照射し,ル-フエッジを検出することにより座標を算出する方法を用いた.物体までの距離は280mm,使用したレンズは55mmである.キャリブレーションは画面全体にわたって,センサと平行な方向に8点,上下方向に4点の合計32点で行った.計測は対象物体のル-フエッジを求め,3次元位置を算出して誤差を求めた.計測は物体をセンサに平行な方向に8回,上下方向に4回動かして各3回ずつ行い,その誤差の平均値を採用した.その結果,誤差の標準偏差は0.098mmであった.補正を行った後の誤差の標準偏差は,0.074mmとなり,0.024mmの低減がなされていることが確認できた. 以上の評価実験により,カメラ座標の検出方法やキャリブレーションの点数に関わらず,ひずみの補正前と補正後で,誤差の標準偏差を低減することが可能であることが示された.このことから,本計測装置の欠点である画像のたる形ひずみを補正することにより,高解像度で正確に画像を撮影することが可能であることが示され,高精度三次元計測に用いることが可能であることが確認できた.
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