研究課題/領域番号 |
07044317
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹内 二士夫 東京大学, 医学部(病), 講師 (70154979)
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研究分担者 |
SONG Yeong W ソウル大学, 医学部, 助教授
PARK Myoung ソウル大学, 医学部, 教授
中野 啓一郎 東京大学, 医学部(病), 助手 (10090490)
YEONG Wook Song School of Medicine, University of Seoul
MYOUNG Hee Park School of Medicine, University of Seoul
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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キーワード | PSS / 日本人 / 韓国人 / TAP1 / TAP2 / HLA-DR / PCR-RFLP / 免疫遺伝学 |
研究概要 |
強皮症(PSS)や慢性関節リウマチ(RA)の発症には、遺伝因子の関与がある事がこれまでのHLA研究やFamily study、動物モデル等で明らかとなっている。PSSについての我々のHLA、及び補体C4の検討では、DRB1*1502-DRB5*0102、及びDRB1*0802及びC4BQ0の増加が、特にScl-70抗体陽性群及びdiffuse scleradermaで観察された。また、PSSでもDR以外にもDQやTNF,さらに未知のgeneが関与している可能性が考えられている。このような日本における我々の研究成果をふまえて、TAP遺伝子について韓国PSSを対象としてソウル大学と共同研究を行なう事とした。本年度は共同研究のための基礎検討を主眼とし、韓国での研究のための準備、手法の確立を目的とした。そのために、日本側では日本人PSSを検討し、日本人のデーターを出すとともに、韓国側への研究手法を含めた研究協力と、研究の統一性の確立を実施した。TAP遺伝子の多型はPCR-RFLP法で検討した。すなはち、genomic DNAをTAP1では2種、TAP2では3種の各々多型のある領域をはさむ配列に特異性なプライマーを用いて部分的にPCR法で増幅する。 そのPCR産物を、Sau3aI、AccI(TAP1),MspI、BfaI、AccII、RsaI(TAP2)等の制限酵素を用いてdigestionし、その切断の有無により多型をもとめた。HLA-DRはDNAタイピング法を用い、DR15、DR16、DR8のgenotyingは、ポリアクリルアミド電気泳動によるPCR-SSCP法で行なった。この際、銀染色を用いてbandを同定した。臨床所見との関連の検討のため、統一データベースを作成する必要があり、家族歴、自己抗体、臨床データを中心にデータベースを作成した。日本人PSS患者92名、正常人95名についてTAP、DR及びDRB1*15、*16、*08 genotypeを検討したところ、diffuse sclerodermaでTAP1A及びTAP2Aのallele frequencyが正常群に比べて有意に増加していた(各々100% 対 85.3%(正常群)、p<0.005、80% 対 42.6% p<0.001)。抗トポイソメラーゼI抗体(a-Scl-70)陽性のPSSでもTAP1Aが93.2%
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と増加していたが、有意ではなかった。TAP2Aは、63.6%と有意に増加していた(p<0.05)。これに対してTAP1Bは、diffuse sclerodermaで有意に減少しており(0%対14.7%、p<0.005)、a-Scl-70陽性PSSでも4.5%と有意に減少していた(p<0.05)。TAP2Bも、diffuse sclerodermaで12.5%(正常群34.2%)と有意に減少していた(p<0.01)。DR,DRB1の検討結果は、我々のこれまでの研究と同様であり、diffuse scleroderma及びa-Scl-70陽性群でDRB1*1502の有意な増加を認めた。各々の遺伝子間の相関ではTAP1AとTAP2A、TAP1BとTAP2Eの有意な相関が認められ(各々 P<0.05、p<0.0001)、DR、DRB1との相関ではTAP2AとDR15(P<0.005)、特にDRB1*1502(p<0.005)との有意な相関が認められ、その他TAP2BとDRB1*0803 (p<0.0005)、TAP2EとDR9(p<0.001) の相関が認められた。 患者群、正常群でのTAP1A、TAP2A、DRB1*1502の相互の相関の検討から、diffuse sclerodermaや、a-Scl-70陽性群ではdrb1*1502の増加が一次的なもので、TAP1AやTAP2Bの増加、TAP2Bの減少は二次的なものであると考えられた。日本人PSSについてはこのような結論が得られたが、これらの傾向はDRについても、TAPについても白人では報告されておらず、韓国の情報は民族差を含めて病因を考える上で非常に重要なものとなる。本研究では韓国サンプルの収集が、正常対照を含めて完了したし、その内幾つかをソウル大ですでに検討を開始している。又、前記の統一プロトコールに基づいて、臨床像との関連を韓国サンプルについても検討している。韓国PSSについては、本研究で行なった基礎検討の結果を生かして、来年度以降本格的な研究成果の確立段階に進めるものと考える。尚、研究打合わせ、指導、討議及び今後の研究方針の調製のため、ソウル大学へ出張した。本研究で行われた日韓のPSSの遺伝的背景の研究は、その病因を明らかにする一つの手段であり、将来の治療にも役立ちうる他、人類遺伝学的に疾病の遺伝を研究する上での手がかりをあたえる研究でもあると考えられ、今後さらに進めていく予定である。 隠す
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