好気性細菌のキノプロテイン依存性ペリプラズム酸化系の構造と機能の解析

• 研究課題/領域番号: 07044324
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 足立 収生 山口大学, 農学部, 教授 (20027189)
• 研究分担者: ヨハネス ダイナ デルフト工科大学, 生物工学部, 教授 ; アーノルド シュワルツ ボン大学, 植物学研究所, 教授 ; ヘルムート ゲオリッシュ ベルリン工科大学, 生物工学研究所, 教授 ; 品川 恵美子 宇部工業高等専門学校, 生物工学科, 助教授 (20116726) ; 外山 博英 山口大学, 農学部, 助手 (60240884) ; 山田 守 山口大学, 農学部, 助教授 (30174741) ; 松下 一信 山口大学, 農学部, 教授 (50107736) ; DUINE A.johannis Faculty of Engineering, Delft University of Technology, Professor ; SCHWARTZ C.arnold Institute of Botany, University of Bonn, Professor ; GOERISCH Helmut Institute of Biotechnology, Berlin Technical University, Professor
• 研究期間 (年度): 1995
• 研究課題ステータス: 完了 (1995年度)
• キーワード: ピロロキノリンキノン / キノプロテイン / 呼吸鎖電子伝達系 / ペリプラズム酸化系

研究概要

ピロロキノリンキノンをはじめキノン補欠分子族を含む酸化還元酵素、キノプロテインの生理学的重要性はたいへん注目されている。種々なグラム陰性の好気細菌では、キノプロテインを初発酵素とする物質酸化系が特徴的に発達している。それによる物質の酸化は、例外なくペリプラズム空間に局在しているキノプロテインによって触媒される。同時にそれらのキノプロテインによる酸化反応は、細胞膜の電子伝達鎖と連結していて、物質の酸化と共役して酸化エネルギーを獲得している。これらの物質酸化系と共役したエネルギー獲得系はミトコンドリアが高度に発達した生物にみられるエネルギー生成系とはきわめて対照的かつ特徴的に異なっている。
本研究は細菌のペリプラズムの物質酸化系を総合的に理解することを目的として、水溶性のキノプロテインを初発酵素とする物質酸化系が、高度に発達しているグラム陰性細菌のペリプラズムに局在する酵素及び電子伝達成分を個々に単離精製したのち、その酸化系の再構成を行うことで、構造的役割を明らかにする。
このような研究目的を達成するために、当該分野の研究に先端的な欧州の研究グループと共同研究することで、相互の技術と情報を相補的に交換して協力することが、効率的な研究方法であるとの合意に達した。
そこで、数種類のキノプロテイン・アルコール脱水素酵素が初発酵素となっているアルコール酸化系の構造と機能について、ベルリン工科大学のゲオリシュ教授と共同研究を行う。ここでは、Pseudomonas属細菌のペリプラズムに局在しているアルコール酸化系の構造とその再構成に焦点を絞って研究をおこなった。アルデヒド酸化系の構造と機能については、ボン大学のシュワルツ教授と共同して研究を進め、ヘム成分を持つアルデヒド脱水素酵素とヘム成分を持たない酵素との機能的な相違についても明らかにした。さらに、キノプロテインの示す立体選択特異性とその反応機構の研究では、デルフト工科大学のダイナ教授とアルコール脱水素酵素を使用して共同研究を行った。これらの研究によって、微生物のペリプラズムで発達している物質酸化系の構造と機能を明らかにするとともに、それらの系と共役している生体エネルギー獲得系の構造を概略明らかにすることができた。
本研究の研究成果は平成7年度中に学会誌に4編が発表されたことは、本研究の成果が特筆されるものであることを物語っている。それらは、(1) 新たに分離されたPseudomonas putida HK-5株は種々なアルコールに生育させると、3種類の互いに異なったアルコール脱水素酵素を生成した。ひとつはPQQを含んでいるが、ヘム成分を持たない酵素、それに酢酸菌のアルコール脱水素酵素のサブユニットIに類似の酵素で、ペリプラズム空間に生成される酵素、アルコール脱水素酵素II-Bと胴II-Gである。II-Bは直鎖1級アルコールに、II-Gはグリセロールや1,2-プロパンジオールなど多価アルコールに基質特異性を示した。反応機構と立体特異性を考える格好のモデルとして、将来の研究課題となるに相違ない。
(2) Acinetobacter calcoaceticusのグルコース脱水素酵素の局在性は、細胞質膜 (mGDH) と水溶性画分 (sGDH) の別々に存在することでよく知られている。それぞれのアポ酵素を調製して、PQQとCaの添加によって酵素が活性なホロ型に変換される過程を詳細に調査して、基本的に両酵素が構造的にも生理学的にも異なっていることを明らかにすることができた。デルフト工科大学のダイナ教授らとの共著となった。
(3) 酢酸菌、Gluconobacter suboxydansのアルコール脱水素酵素には、活性な酵素に加えて、不活性な酵素が存在することを実証した。また、不活性は酵素はin vivoでエネルギーが付与されることで活性型へと変換されるものであることも実証された。
(4) Gluconobacter suboxydansのアルコール脱水素酵素は3つの互いに異なったサブユニットから構成されている。このうち、3モルのチトクロムcを含むサブユニットIIの機能を中心に、アルコール酸化反応の際に酵素の分子内を電子がどのように伝達されるかについて、きわめて斬新な研究成果を発表した。

研究成果

• [文献書誌] 外山博英ら: "Three Distinct Quinoprotein Alcohol Dehydrogenases are Expressed when Pseudomonas Putda is Grown on Different Alcohols" J.Bacteriology. 177. 2442-2450 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 松下一信ら: "Soluble and Membrane-Bound Quinoprotein D-Glucose Dehydrogenases of The Acinetobacter-Calcoaceticus - The Binding Process of PQQ to The Apoenzymes" Biosci.biotech.Bio Chem.59. 1548-1555 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 松下一信ら: "Generation Mechanism and Purification of an Inactive From Convertible In-Vivo to The Active From of Quinoprotein Alcohol-Dehydrogenase in Gluconobacter Suboxydans" J.Bacteriologs. 177. 6552-6559 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 松下一信ら: "Function of Muliple here C Moieties in Intramolecular Electron Transport and Ubiquinone Reduction in The Quinohemoprotein Alcohol Dehydrogenase Cytochrome C Complex of Gluconobacter Suboxydans" J.Biol.Chem. 271. (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] H.Toyama et al.: "Three distinct quinoprotein alcohol dehydrogenases are expressed when Pseudomonas putida is grown on different alcohols" J.Bacteriology. 177. 2442-2450 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Matsushita et al.: "Soluble and membrane-bound quinoprotein glucose dehydrogenases of the Acinetobacter calcoaceticus : The binding process of PQQ to the apoenzymes" Biosci.Biotech.Biochem.59. 1548-1555 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Matsushita et al.: "Generation mechanism and purification of an inactive form convertibleto the active form of quinoprotein alcohol dehydrogenase in Gluconobacter suboxydans" J.Bacteriology. 177. 6552-6559 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K.Matsushita et al.: "Function of multiple heme c moieties in intramolecular electron transport and ubiquinone reduction in quinoprotein alcohol dehydrogenase-cytochrome c complex of Gluconobacter suboxydans" J.Biol.Chem.271. Febrary issue (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より