配分額 *注記 |
541,100千円 (直接経費: 524,000千円、間接経費: 17,100千円)
2001年度: 74,100千円 (直接経費: 57,000千円、間接経費: 17,100千円)
2000年度: 252,000千円 (直接経費: 252,000千円)
1999年度: 19,000千円 (直接経費: 19,000千円)
1998年度: 23,000千円 (直接経費: 23,000千円)
1997年度: 41,000千円 (直接経費: 41,000千円)
1996年度: 46,000千円 (直接経費: 46,000千円)
1995年度: 86,000千円 (直接経費: 86,000千円)
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研究概要 |
1.脳由来神経成長因子(BDNF)が大脳側頭葉36野において、記憶形成時に特異的に発現することを発見した。遺伝的バックグラウンドをコントロールするため、左右の大脳半球を外科手術により分離し、片側をコントロールとして用いる分離脳標本を開発した。一側の大脳半球に対連合課題を学習させ、対側の大脳半球にはコントロール課題として視覚弁別課題を学習させた。視覚一次野、視覚四次野、TE野、36野、海馬の各々で種々の神経栄養因子遺伝子、コントロール遺伝子の発現を定量した。BDNFは、対連合記憶形成時にのみ36野に特異的に発現していた。この事実は、対連合記憶形成にBDNFが特異的に寄与していることを示しており、記憶形成において神経回路の再構成が必要である、との仮説を支持する証拠を与える(Tokuyama et al.Nature neuroscience 3,1134-1142,2000)。 2.脳の情報処理では、感覚入力を受ける感覚領野から運動出力を指令する運動領野へ向かって、隣り合う領野が次々と信号を受け渡して行く階層的情報処理が主に考えられてきた。しかし、感覚刺激を手がかりとして記憶を想起するときにはこの原理が成立しないことを発見した。記憶想起信号の伝わる向きを反応潜時から計測すると、まず傍嗅野に想起対象を表す信号が現われ、その後、次第にTE野のニューロン群が想起対象をコードするようになることが判明した。この結果は、記憶想起信号が大脳側頭葉内を感覚信号とは逆方向に伝播することを示しており、記憶想起の障害がどのようなメカニズムによって起こるかを解析する基礎を与える(Naya,Yoshida & Miyashita,Science 291,661-664,2001)。 3.サル大脳認知システムの大域構造を明らかにする方法として機能的磁気共鳴画像システムを用いることの有用性を1.5テスラーMRI機によって検討した。認知シフト課題としては、ウィスコンシンカード分類課題を用いた。神経心理テストで用いられた原課題の本質を損なうことなくサルにも遂行可能なように課題を単純化することを試みた。即ち、次元数は変化させず、referenceカードの選択肢数を減少させることにより認知負荷を減少させた。ヒトおよびサルの両種の被験者に対して、同一の視覚刺激と課題シークエンスを適用した。その結果、ヒトおよびサルの両種において、注意のシフトに同期して前頭葉の一部が活性化することが見出された。この活性化領域は両種で機能的に相同な領域とみなされるが、これらの領域は形態学的(細胞構築学的)にも相同な領域であった。以上のような新しい比較機能学的アプローチは、霊長類における認知機能の進化に新しい知見をもたらすものである(Nakahara,Hayashi,Konishi & Miyashita,Science 295,1532-1536,2002)。
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