研究課題
特別推進研究
生物の多様性は現代生物科学の最も重要な研究課題の一つであり、本研究ではその発生学的メカニズムを、特に脊索動物の起源と進化に的を絞って解析することを目的とした。まず、脊索動物の起源と進化についての分子系統学的解析を行った。EF-1αとアクチンのアミノ酸配列の比較から後口動物各群の系統・類縁関係を解析し、脊索動物の起源と進化を分子系統学的に明らかにした。次に、ホヤのオタマジャクシ幼生の発生の分子メカニズムを次の3点から研究した。(1)筋肉細胞:筋肉特異的アクチン遺伝子、筋分化調節遺伝子および筋分化決定因子の分子的実体を解析し、筋分化の制御機構の全体像を明らかにするようにつとめた。(2)脊索細胞:脊索は脊索動物を特徴づける最も重要な器官である。脊索動物の脊索形成にBrachyury遺伝子が重要な働きをなす事を明らかにするとともに、ホヤのBrachyury遺伝子の発現調節機構およびBrachyury遺伝子の下流で働く遺伝子についても解析した。特に下流で働く遺伝子20についてすべての特徴づけを行った。(3)無尾幼生を生じるホヤでの解析:Molgula oculataとM.occultaは近縁な二種のホヤであるが、前者は通常のオタマジャクシ幼生を生み出すのに対して後者は尾をもたない無尾幼生を生じる。この二種を利用して、オタマジャクシ幼生形成機構を研究した。さらに、後口動物での脊索、鰓裂、および肉柱の形成に関与する遺伝子群を単離し解析した。脊索動物を特徴づける器官である脊索、鰓裂、および肉柱の形成に関与する遺伝子群を、棘皮動物・半索動物・尾索類・頭索類で単離し、その発現機構を比較検討し、脊索動物のボディープランの進化についての理解を深めた。
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