自閉症児の自己認識について、鏡像認知課題を用いて検討した。ル-ジュを鼻に添付してその後鏡を見て、鏡の自己像を手がかりに鼻のル-ジュをふき取れるかどうか、を指標としたル-ジュ課題によって自己像の成立の有無を調べた。従来の研究では、自閉症児はル-ジュをふき取ることは出来るが、その際に健常児に見られる恥ずかしさ(coyness)などの自己意識情動がみられず、その意味で自己像の成立に何らかの障害を持っていることが指摘されてきた。本研究では、発達年齢0:11(11カ月の略)・・・2:4の自閉症児19名を対象とした。結果は以下の通りである。(1)ル-ジュを鏡自己像を手がかりにふき取ったものは54.4%みられた。(2)しかもその自己認識行動を行ったものの中で、ル-ジュを添付された自己像を見てから、微笑みの消失・エコラリアの消失・実験者を見上げる行動、のいずれかがみられたもの、これを自己像に対する困惑反応とすると、それを行ったものが75.0%あった。これは従来の研究と異なり、自己認識行動を行う自閉症児は健常児と同じく「見られる対象としての自己」の認知を確立している可能性を示している。(3)ジョイントアテンション行動としての後方指さし理解、指さし産出と、自己認識行動の個人内連関を検討した。その結果、自己認識行動を示すことと応答の指さしを行うことが発達的に連関していることが示された。ジョイントアテンション行動と自己認識の自閉症における連関を今後さらに検討する必要がある。
|