平成7年度の重点「認知・言語」の科研費による研究として、以下の4つのことを行った。 (1)筆者の申請テーマである身振りや延滞模倣と理論的に深く関連した乳幼児期のセルフ発達について、論文「人生における乳幼児期の意味 -私たちのセルフの起源-」(1995)において、"ふり"の発達も絡めて幅広い視点から理論的なレヴュ-を行った。 (2)乳児Uの生後2年目・3年目のビデオ記録テープを遂語的に文字記録化する作業を引き続いて行った。この作業のために人件費を用いた。 (3)筆者が長期に渡って全生活を日誌的に縦断的観察を行った乳児Uの生後2年目のデータについて、その日誌的観察記録の分析・整理の作業を行い、それらの分析資料の一部を整理し(その際科研費で購入したパソコンを用いた)、そのデータをもとに"ふり"を次の4つのタイプに分類する新たな理論を提出した。(1)コミュニケーション行為としての"ふり"、(2)「動作による表象」としての“ふり"、(3)記号行為としての"ふり"、(3)象徴的行為としての“ふり"。これは筆者が昨年度提出していた「"ふり"の3つのタイプ」(1994)という理論を新たな分析データを基に修正したものである。これを「"ふり"の4つのレベル」(1996)という論文にまとめた。 (4)自閉症児の療育に参加し、その遊びを観察し記録することによて、彼らの象徴能力・ふりの能力の特異性を明らかにする長期的縦断研究を継続して行った。また、自閉症児の"ふり"や象徴能力についてレヴュ-的研究を行い、それを論文「"ふり"と象徴能力;自閉症巡る諸問題」(1996)としてまとめた。
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