(1)霊長類の共同注意 昨年から引き続いておこなった“Experimenter-given cues"の分析をおこなった。オランウータンを対象として、タッピング、指さし、注視、目だけによる注視など、いくつかの手掛かりを選択課題場面で与え、どのような刺激を使用できるかを検討した。その結果、実験者が与える行動的な手掛かりを、選択課題場面ですべて使用することができた。 この結果はヒト幼児やチンパンジーの結果と一致していた。 (2)共同注意成立の後続事象に対する影響 7ヶ月から24ヶ月の乳幼児を対象として、母親との共同注意の成立が、どのような意味をもつのかということを検討するために、以下のような実験をおこなった。CRTに同じ刺激(横並びに2つの線画)を2回呈示し、1回目は母親の指さしや声かけなどにより特定の刺激に対する注意を喚起したが、2回目は何もしなかった(実験群)。このときの被験児の注視時間を記録した。また、統制群として、1回目も2回目も母親が何もしない条件を設けて先の条件と比較した。その結果、実験群では、1回目は注意を促された方の刺激を長く見たが、統制群では2つの刺激に対する注視時間は差がなかった。2回目は、実験群でも2つの刺激に対する注視時間の差が小さくなったが、統制群ほどではなく、母親との共同注意が後続する注視行動に何らかの影響を及ぼしていることがわかった。また、注意の喚起が母親によってではなく、刺激自体の点滅などによる変化の場合も条件として現在分析をおこなっている。
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