筆者に与えられた課題は、国連売買条約(以下ではCISGと略称)の知識構造を分析し、それに基づいて同条約に関する知識ベースを構築することである。現在、その前提作業として、諸外国で下されたCISGに関する判決例・仲裁判断例の収集・分析作業を行っている。 平成7年度中に、既発表のCLOUT (Case Law on UNCITRAL Texts)-CISGを起草したUNCITRAL(国連国際商取引法委員会)事務局が、同委員会の作業から生まれた条約に関する各国の判決・仲裁判断の要旨を紹介するとともに、その書類を提供するもの-に掲載されている判決例等の分類・整理作業は概ね了えることができた。その結果、CISGの各条文に解釈ないしは推論過程における一定の傾向を抽出することに成功し、さらに、CISGを重要視する各国の積極姿勢を再確認することができた。その成果は、「法律エキスパートシステムの開発研究」平成7年度研究成果中間報告会(平成7年10月28日)、同研究成果報告会・第6回シンポジウム(平成8年3月17日)および日本国際経済法学会第5回研究大会(平成8年10月29日)等で口頭報告したほか、 『研究成果報告書』(平成8年3月)197-201頁および『東北学院大学論集・法律学』48号(平成8年3月)222-234頁に掲載した。また、『国際経済法』5号(平成8年10月刊行予定)にも掲載予定である。 今後も、CISGに関する判決例等の収集・分析作業を継続するとともに、さらに、その分析結果をふまえての設例作成作業を行う予定である。
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