・今年度の研究の目的は、文献調査を中心として、旧ユ-ゴの自主管理企業の民営化の実際を明らかにすることであった。旧ユ-ゴは、ボスニア・ヘルツェゴビナを中心とする地域において1995年末まで戦闘状態が続いていたこともあり、社会主義から資本主義への移行は一様に進んでいない。今年度は、クロアチアの民営化の上体を中心に検討した。 ・その結果、以下の点が明らかになった。 (1)クロアチアにおいて1993年10月に始められた経済安定化政策は大きな効果を生み、インフレは完全に沈静化し、実質賃金も順調に回復している。 (2)自主管理企業の民営化は、各社の資産総額を評価して株式会社にすることを通しておこなわれている。株式の売却は、チェコでとられたようなバウチャー方式ではなく、勤続年数に応じた割引制度によって実施されている。 (3)利益の上がっている企業の株式はよくい売れているが、赤字企業の株式売却は進んでいない。この点が、クロアチア民営化の今後の課題である。
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