研究概要 |
本年度は基本ツールの整備に重点をおいてソフトウエア開発を進めるとともに,予備的な実験を行った. 1.「かたち」の解析:図形の対称性解析のための処理手順とプログラムを整備,改善した.これによって,画像データから図形を抽出し,さらにその輪郭線を追跡すること,そして,そのボロノイ図とデロ-ネ-三角分割にもとづいて図形の対称性を解析することが,ほぼ可能になった.さらに,対称性にもとづく図形の記述と解析の方法を検討した.実験のためにオーストラリア・アボリジニのブ-メランや斧,玩具,デザイン文様の画像を入力して予備的な解析実験を行った.また,他の応用として,側面形状にもとづく立体形状のモデリングの方法と,その計量のアルゴリズムを導出した.今後はソフトウエアの整備と,図形の記述・解析の方法の検討を進める.さらに,対称性解析にもとづく方法の適切な応用を見い出していきたい. 2.色の解析:コンピュータが色を人間的知覚合わせて表現し,解析するためのソフトウェア開発を行った.まず,カラー画像入力機器におけるRGB三原色による表現からマンセル表色系(HSV表色系)へ変換するためにMTM法とL^*a^*b^*表色系を用いたプログラムを作成した.この過程で,資料標本の照明条件や画像入力用センサの分光特性のために色情報が変質することが分かってきた.すなわち,コンピュータによる色情報の解析に先だって資料標本固有の色情報(色反射係数)を復元するツールの開発が必要になった.本研究ではそのために色相スケールを同時撮影する方式を検討し,ハフ変換(画像認識の一手法)を用いた自動的な処理手順を構成した.予備的な実験の結果,蛍光灯のように自然色に近い照明のもとでは色補正が可能であるが,一方,白熱電球による照明のもとでは十分な補正は行えないことが分かった.この問題は今後さらに検討していきたい.
|