研究課題/領域番号 |
07207223
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
長瀬 真理 城西国際大学, 経営情報学部, 助教授 (90119868)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1995年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | 文体統計学 / 真偽問題 / シェイクスピア / ニューロコンピュータ |
研究概要 |
近年、文学や哲学の研究にコンピュータを利用した文体統計学が注目されている。これは、個人の文体の相違を識別する多種類の言語パラメーターを使って、量的に言葉の使用を研究する新しい方法で、テキストの真偽問題や年代決定の解明に成果を上げている。本研究では研究例の豊富なシェイクスピアを取り上げ、それらの研究を系統的に分析し、先行する欧米での様々な統計手法の解明と基礎理論の有効性を調査した。 1)欧米で最も権威ある学会である、ALLC (Association for Literary and Linguistic Computing)とACH (Association for Computers in the Humanities)の雑誌に発表された主要なシェイクスピア研究の論文を洗い出し、書誌データベースとシソ-ラスを作成した。又最新のニューロ・コンピュータを利用した論文については全文データベースを作成し、機械翻訳ソフトを利用して邦文データベースを作成した。 2)作成されたデータベースを基に、今では“古典的"と称されるA. Q.モートンの語彙や特定の単語の位置を中心にした研究から、M.W.A.スミスが注目した頻度の高い単語の利用、さらにT.メイアムに代表されるニューロコンピュータを使った最新の研究までの展開を系統的に整理した。 初期の研究では、コンピュータは過去の理論の跡付けに利用され、長年蓄積された様々な指標をパラメーター化することに力点が置かれた。その意味では仮説検証型の研究であった。しかし次第にコンピュータの機能や言語理論の発展に伴い、無意識に使われる高頻度の指標が開拓されるようになった。だが昨今は、高度なコンピュータ技術の発展の影響で、新しい手法で何ができるか、といった技術先行型の研究が増えてきた。中でもニューロコンピュータによるパターン認識の手法を使った文体研究が流行している。しかし、この方法は、データセット内に生ずるノイズも多く、神経のネットワークのトレーニングも必要となる。その為、文化系の研究者だけでは、実際の技術や理論の修得に困難を伴うため、手法がブラックボックス化される恐れがある。又望ましい成果を上げるために、出力されたデータに合わせて入力を操作することも可能なため、コンピュータを使うメリットと共に、弊害も目だつようになっている。文学者の質的なアプローチと統計学者の量的なテクニックの間の橋渡しをするような学際的な研究環境の整備が急務となろう。 まお今回はデータの整備に時間がかかり成果の公表には至らなかった。文化系研究者に使い易いソフトの開発を含め今後の課題としたい。
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