研究概要 |
本年度は文書画像に焦点を絞って,劣化サンプルを取り上げて,人文系資料に多い劣化について有効な劣化回復方式を検討するとともに,画像処理ライブラリの構築とインタフェース部分の試作を行った.我々は劣化文書資料を二値画像としてではなく、多値画像として入力するアプローチをとった.劣化回復は,そこからクリアな二値画像を生成することであると考えられる.したがって,劣化回復には(1)多値画像状態でのノイズの除去,(2)多値画像からノイズを除去しながら二値化,(3)二値画像でのノイズ除去,の三段階が考えられる.これらの観点から,既存のアルゴリズムをサーベイし検討を加えた. アルゴリズム評価資料として武道史の研究資料の中から,(1)昭和初期の印刷物を昭和50年ころに数世代複写したもののコピー,(2)近世文書のマイクロフィルムからのコピー,の2種を用いることにした.それぞれについて最適な画像処理アルゴリズムを選定した.それらを含む有用と思われる33種のアルゴリズムを採択した. システム開発は,有効と思われるアルゴリズムを,まずDOSコマンドラインから起動できるプロトタイプとして実装し,評価文書画像で有効性を試験した.有効性が認められたものについて,Windowsのダイナミックリンクライブラリ(DLL)に移植した.またライブラリとして構築した画像処理機能を使うための,人文系研究者向けのユーザーインタフェースの試作を行った. 来年度以降は,写真等の多値画像・カラー画像の劣化回復に広げて同様の作業を続行する.また処理速度の向上と,人文系研究者に使いやすいインタフェースの検討を引き続きおこなう.
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