石器の持つ属性は、要素が少ないと考えられる石器においてもっともはっきりとした形で認識できるはずである。昨年度奨励研究で弥生時代の打製石器のうち、細部調整のある剥片について細部調整を属性に分解して検討した。本年細部調整のない、いわゆる剥片について、理念的にとられられる属性と、実際の分析過程において計測される部分との関連性について検討した。 いかなる資料を分析するにあたっても、対象の出自があきらかでなくてはならない。本年は一括資料として弥生時代の土壙出土剥片を分性することができた。大阪府八尾市田井中遺跡の資料は大型であるがため、小型の剥片では顕在化しない、計測部位の選択の問題が重要となることがわかった。一般に計測される剥離方向長はその定義から、計測部位を決定するのがむつかしい属性である。長さは分析対象としてよくとられることと、多属性による分析でも属性群としての長さが全体を量的に規制することが多く、計測値の主成分分析の解釈にまで強く影響することが確認された。当該資料についてさらに多方面からの属性値の選択を検討中である。
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