クラウンエーテル系化合物のプロトン化に際しては、分子内水素結合の強さが重要になることを明らかにした。クラウンエーテルの部分構造を持っていても環をなしていないためプロトン化に際してひずみがほとんど生じないglyme-2を基準化合物として扱うことができる。glyme-2のプロトン化に際して形成される部分構造は、12-crown-4、15-crown-5および18-crown-6のプロトン化体においても形成される。この部分構造はクラウンエーテル系化合物がプロトンのような小さなイオンを取り込む際の基本的構造であると考えられる。プロトン化におけるエントロピー変化の傾向からプロトン化に際しての大きなエントロピー減少がみられるglyme-2と18-crown-6は非常に効率良くコンパクトで良く配列したようなプロトン化体をつくりうると考えられる。一方、12-crown-4や15-crown-5は、glyme-2や18-crown-6ほどは、しっかりした分子内水素結合が難しく堅いプロトン化体が形成されないと考えられる。モートナーの推測的値とケバ-レの測定値とでかなり異なった値が与えられていた18-crown-6のプロトン親和力に対して理論的観点から227.45kcal-molとの予想値を与えた。 第一遷移系列六配位二価イオンの水交換反応の反応機構を解明するためスカンジウムと銅に注目した。会合的機構、解離的機構の中間状態と考えられる七配位状態と五配位状態の構造を決定し、それぞれのポテンシャル面上での性質を明らかにした。七配位構造での安定性の違いにより、二次の遷移状態になる銅では解離的機構のみで反応が進むのに対し、安定点になるスカンジウムでは会合的機構でも反応が進みうると考えられる。その結果、七配位状態のポテンシャル面上での性質が反応機構を決定する要因となっていると考えられる。
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