研究概要 |
本年度は,以下の研究を行った. ・本研究代表者は代数曲面の素数べき字数の巡回被覆曲面の不正則数に関す評価式の証明に成功した.すなわち,巡回被覆曲面の不正則数は元の代数曲面の不正則数の被覆次数倍と分岐曲線の補集合の第一ホモロジー群のデータ(ベッチ数やねじれ部分の位数等)を含む補正項で押さえられるというものである.応用として代数曲面上の曲線の特異点のミルナ-数,ザリスキー・エノ-数などの不変量に関する不等式を証明した.この結果はある種の平面曲線の非存在を証明するのに有効である.例えば,8次曲線のA3型特異点の個数は最大10個であることや7次曲線のA4型特異点の個数が6個以下であることが証明される.この計算にはザリスキー・エノ-数の計算も必要であるが,その計算公式を求めるのにも成功した.評価式の証明には無限巡回被覆に付随して定義われるローラン多項式環上の加群の不変量であるアレクサンダー多項式が有効に用いられた.この結果は古典的なザリスキーの定理を拡張したものである.この研究でホモロ-ジ-群のねじれ部分が重要であることが認識されたので,今後の研究の課題にしたい,すなわち,巡回被覆面の不正則数には第一ホモロジー群のねじれ部分の位数が影響を持つということである.また,このねじれ部分の代数幾何学的な意味づけも興味あることである. ・研究分担者の矢野環は対数的自由超平面に付随して定義される微分方程式系について新しい知見を得ている.この結果は現在の所未発表である.
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