c=6の超対称性の理論から、K3曲面のミラーシンメトリーを考えることができる。特に、トーリックFano多様体の超曲面として現われる特別なK3曲面に対しては、Batyrev理論を応用して、ミラーシンメトリーおよびその特異点理論への応用についての昨年の研究がある。これにより、特異点理論における奇妙な双対性と呼ばれる現象は、ミラーシンメトリーとして解釈されるのみならず、凸体の幾何学の単純な双対性に帰着されていた。この経緯において、ミラーシンメトリーの精密な代数的記述の方針がわかってきた。 本年度は、昨年度の結果をヒントに、一般のK3曲面に対するミラーシンメトリーの定式化と精密化を、主に周期写像を用いて解析することにより行っていた。例えば、周期と複素化Kahler類を交換する操作が、周期写像の全射性ににより、複素化Kahler類付きのK3曲面の分類空間の対合を定めるが、これは、有限の自己同型を除き、特異コホモロジー群の間に写像を定める。この操作は、特に複素化Kahler類が、代表的類の中で一般の時に、元からある代表的なミラーになっている。 1月には関連する話題でのワークショップを北海道大学で主催し、この話題に関する最新の情報を整理し、理解を深めた。 また、シドニー大学のPaunescu氏と、3次元トーリック特異点の射影的特異点解消の簡単なアルゴリズムを構成した。これは計算機のプログラムとしても利用できるもので、計算に有益である可能性がある。
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