研究概要 |
我々の取り上げた超幾何方程式系はグラスマンをモデルとしn個のパラメータα_iを含む(k,n)型とよんでいる方程式である。グラスマン多様体G_<k,n>のあるd=(n-k-1)(k-1)次元商空間X(k,n)上に定義されている。方程式系の独立な解の個数はr=(n-2 k-1)である。いまz_1,...,z_rをr個の独立な解とするとψ(x)=[z_1(x),...,z_r(x)]はX(k,n)から射影空間P^<r-1>への写像を定める。これは射影一次変換を除いて,解の取り方によらず定まっている。(k,n)=(2,n)のときは,(r-1)-d=(n-3)-(n-3)=0であるので,同次元の空間の写像になり,この写像を周期写像として捉えることはPicard-Terada-deligne-Mostowによる理論にまとめられている。また,(k,n)=(3,6)であれば,r=d+2=6,かつψの像はP^5の非退化超曲面であり,自然に定まる共形構造は平坦である。特に,α_i=1/2(1【less than or equal】i【less than or equal】6)のとき,像は非退化2次超曲面の一部になっている。 そこで,E(k,n),特にE(k,2k)も同様の性質を持っているのではないだろうかという自然な疑問が生じ,E(3,6)に現れる2次曲面はグラスマン多様体G_<2,4>のP^5へのPluckr埋め込みであることと,d=dimG_<k-1,n-2>であることより,(パラメータαが特殊であれば)写像ψの像はG_<k-1,n-2>⊂P^<r-1>に乗っているのではないだろうかという期待が少なからずあった。しかしながら,山口圭三(北大),吉田正章(九大)との共同の研究の結果,"k【greater than or equal】3,n-k【greater than or equal】3および(k,n)≠(3,6)とするとき,どんなパラメータαについても,ψの像はグラスマン多様体G_<k-1,n-2>⊂P^<r-1>に含まれることはない",ということがわかった。もっと一般的に"一般にエルミート対称空間の射影埋め込みをモデルとする微分方程式系には剛性定理が成り立つこと;グラスマン多様体のPlucker埋め込みについては,上記の除外時のみに剛性定理が成立しない"ということができる。この結果は(k,n)=(3,6)以外のE_<k,n>の写像ψについては、新しい問題を生むことを意味している。
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