本年度は、有限体上定義された代数曲線上の関数空間から得られる誤り訂正符号(代数幾何符号)に関する数値実験を行った。 代数幾何符号については、情報率と誤り訂正能力に関するVarshamov-Gilbert限界式を越える優秀な符号系列が、モジュラー曲線を底曲線とする符号の中で得られることが知られており、現在実用化に向けてその効率的な復号法の開発が主要なテーマとなっている。そこで本年は代数曲線論を計算機上で展開できるスタイルで記述し、符号化アルゴリズム、及び復号化アルゴリズムのひとつを実際にプログラムに組んで数値実験に取り掛かった。現在はプログラムのプロトタイプを作成した段階であり具体的成果はまだ得られていないが、代数幾何符号のパラメータを系統的に動かしてデータベースを作成し、数値観察を行なうことを計画している。また今のところ数値計算には曲線の定義方程式を与える必要があるので、モジュラー曲線から得られる符号を実用に使えるよう具体的に記述することは全く易しくない。保型形式に関して今まで行なってきた数値実験の計算データを実用化に応用することも今後の課題である。 テ-タ級数による一変数保型形式の空間の生成問題に関する数値実験は、今年度偶数レベルの場合を行う予定であったが、これは継続して研究中である。
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