研究概要 |
Gaussによる超幾何微分方程式と保型関数論と曲面論の見事な融合にもかかわらず、複素領域での線形微分方程式の研究は、従来解析的及び局所的なものが殆どであった。本研究はGaussの超幾何微分方程式を複素射影直線上の3点に特異点を持つorbifoldの一意化方程式ととらえることにより理論の一般化及び特殊化を目指すものである。平成7年度に、以下の研究業績を上げた。 (1)射影部分多様体の同値問題。対称領域Dが同変に最小次元の射影空間P^Nに埋め込まれているとする。このとき課題は“部分多様体V⊂P^Nが局所的にDと射影的に同値になるための微分幾何的な条件を求めよ"である。この問題は一意化方程式の研究に不可欠である。DがIV型領域(即ち二次超曲面)の場合は佐々木武の協力により解決された。 (2)配置空間(configuration spaces)の幾何。X(k, n)を(k-1)-次元射影空間内の一般の位置にあるn点の配置空間とする。この空間は今世紀始めの代数幾何(特に不変式論)の中心問題の一つであったが(特にCobleによる研究)、これが一般化された(k,n)型超幾何微分方程式の自然な定義域であることが認識されてから再び研究され始めた。(2,n)及び(3,6)の場合に配置空間の組み合わせ位相幾何的性質を明らかにした。 (3)Modular interpretation of configuration spaces。配置空間を商D/Γに書こうというのが表題に上げた問題である。X(2,n)の場合には多くの研究があるが、それ以外には唯一つX(3,6)の場合に成功した (4)Twisted(co)homolgiesの交点理論。Twisted homolgiesの交点理論を完成し、現在twisted cohomolgiesの交点理論を建設中である。また被覆空間の(co)homolgiesと底空間のtwisted (co)homolgiesの関係が明らかになりつつある。 (5)Selberg型積分の研究。(4)で述べた交点理論の完成で研究の方法が確立された. (6)超幾何写像の像。(k,n)型超幾何微分方程式の解による像は(2,n)及び(3,6)の場合以外はPlucker埋め込みされたGrassmannianにはならぬことを示した。これは内外の研究者を驚きをもって失望させた。
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