研究概要 |
全マントル規模の上昇流の地球史を通じた調査を行うためには,造山帯中に付加した緑色岩の岩石学的研究および年代学的研究が必要となる.西南日本外帯に付加したみかぶ帯について,このような観点から研究を行った. 1.みかぶ帯は地域に関係なく,塩基性火山岩および岩脈群と苦鉄質-超苦鉄質集積岩より構成される.塩基性火山岩には海底噴火の証拠である枕状溶岩やハイアロクラスタイトが観察された.また黒瀬川帯等とは異なり,テクトナイトはみられなかった.塩基性火山岩および苦鉄質-超苦鉄質集積岩で観察される結晶晶出順序は,かんらん石の次に単斜輝石が晶出し,中央海嶺玄武岩とは異なるものであった。 2.主成分元素の変化経路は,かんらん石の集積・分別およびそれに引き続く単斜輝石の分別で説明可能である.初生マグマのMgO含有量は中央海嶺玄武岩よりも高く,大洋島に類似する.鉛同位体組成・微量成分組成は,一般に中央海嶺玄武岩あるいは海台に類似するが,一部に大洋島の組成に似るものが見られた.high-field-strength元素比も異なり,複数の起源物質が考えられる.現在スーパープリュームが上昇していると考えられているポリネシアの火山岩に類似した組成の岩石は観察されなかった. 3.岩体を構成する岩脈から火成起源角閃石を分離し,K-Ar法を用いて放射年代を測定した.紀伊半島鳥羽岩体の角閃石の年代は様々な岩石を測定しても142〜153Ma(誤差は最大で8Ma)の範囲におさまった.この結果火成活動の年代は1つの岩体においては誤差の範囲内で一致することがわかった.また関東山地黒内山岩体の角閃石のK-Ar年代は,199Ma(誤差10Ma)であり,みかぶ帯は単一の時代に形成されたものではないことが判明した.
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