研究概要 |
輝石-スピネルシンプレクタイトの微細構造の研究:北海道幌満カンラン岩中の輝石-スピネルシンプレクタイトの組織を走査電子顕微鏡観察とディジタル画像処理により研究した.特に鉱物間の空間相関を統計的手法で定量的に記述することに留意した.本科研費で購入した半導体検出器用アンプはBEI像観察に用いた.シンプレクタイトの組成は岩石間でほぼ一定であるが,組織の空間スケール,粒子サイズは様々であり,岩石の化学組成とは簡単な相関は認められない.シンプレクタイトの組成はザクロ石にカンラン石成分が22-24重量%をつけ加えたような形になっており,シンプレクタイトの組成はサブソリダスでザクロ石がカンラン石の反応でできたことで十分に説明できる.空間相関からもとめたスケールパラメータにもとづいて,以下のようなシンプレクタイト形成過程,構造進化のモデルを考案した.ザクロ石はまず単一,準安定相のAl-Cr-輝石に転移する.引き続きこの輝石が不安定化しCa-輝石とCa-poor輝石の2相に相分離を始める.この分離はスピーノ-ダル的におこるので,両輝石のドメイン構造は時間とともにしだいに大きくなる.この粗大化の様々な段階で輝石中に過剰に溶け込んでいたAl,Cr成分がカンラン石成分と反応してスピネルとして析出してくる.スピネルの核形成は両輝石の結晶粒界に選択的に起こり成長するので,当初のスピネルはCPX粒子をとりかこむような,紐状の不規則な形状をとる.このような形状は不安定であるので時間がたつとともに,粒子の表面積を小さくするように,スピネル粒子は丸みを帯びた形状になって行くと同時にマトリックスの輝石ドメイン構造も大きくなって行くので,スピネルの分布と輝石境界は無関係となってゆく.スピネル出現時の輝石のドメイン構造の変化を考えることにより,シンプレクタイト構造の多様性が説明できる.この研究成果は現在投稿中である.
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