我が国を中心に単離がすすんでいるC100までの大きなフラーレンの電子構造と幾何構造とをモデルポテンシャルおよびタイトバインデング法により求めた。そして、構造の特徴と、単離可能性とに強い相関があることを発見した。すなわち、各フラーレン上にある12の5角形が6つの2量体として存在すること、さらに、5角形以外のフラーレン構成単位では、偶数個の炭素原子からなるチェーン(鎖)、たとえば、C2、C4、C6などがほとんどであることを発見した。これは、フラーレンの成長段階でこのようなことがおこっているものと考えられる。これまで、謎とされたきた、フラーレンの成長機構を解く手掛かりとなる、大きな発見と言えよう。 また、これまでに単離されたフラーレンのなかでは、C78が最も低い空電子状態を持つことを発見し、これを用いた黒鉛層間化合物の設計を試みた。その結果、黒鉛・フラーレンすべて炭素からなるにもかかわらず、黒鉛層からフラーレン層への電荷移動がおこり、全く新しい炭素伝導体となることが分かった。
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