研究概要 |
触媒的不斉マイケル付加反応,特に,多くの種類の不斉炭素を簡便に構築できるプロキラルなマイケルアクセプターの反応には,これまであまり成功例がない.本研究では,アミノ酸金属塩を用いるカルボニルの新しい触媒的活性化法を用いて,プロキラルアクセプターへのマロン酸エステルやニトロアルカンの不斉マイケル付加を検討してきた.本年度は,マロン酸t-ブチルエステルの反応で高い不斉誘起に成功した.L-プロリンルビジウム塩存在下,マロン酸t-ブチルエステルをエノンに付加させると高い不斉誘起を示すが,収率的に満足すべき結果を与えていなかった.ここにフッ化セシウムを添加すると,不斉収率を損なうことなく,反応が促進されることがわかった.L-プロリンルビジウム塩(20mol%)とフッ化セシウム(20mol%)存在下で,収率良くマイケル付加反応が進行し,鎖状(E)-エノンでは80%ee以上の高い不斉収率を達成した. ヘリセン類は光学活性で大きなπ-電子面をもつ興味ある不斉ユニットであるが,光学活性体を十分な量供給できないために,特性の研究があまりできなかった.今回新しいキラルbuliding blockである1,12-ジメチルベンゾ[a]フェナントレン-5,8-ジカルボン酸の合成法と光学分割法を確立し,絶対配値を決定した.この方法によって,光学活性体をグラム単位で供給できるようになった.対応する酸塩化物にジアニリンスペーサーを作用させて,ヘリカルキラリティーによって構築される大環状ポリアミド化合物を合成した.適切な反応条件を選択すると,[1+1]から[4+4]の組成の一連の環化物を得ることができた.
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